<高校野球広島大会:瀬戸内5-1崇徳>◇17日◇2回戦◇コカ・コーラウエスト

 今春の覇者・瀬戸内が、エース山岡泰輔投手(3年)の快投で、昨秋王者の崇徳を退けた。1回に先制点を与えたが、相手のミスにもつけこみ、すぐに逆転。2回以降は山岡が崇徳打線を3安打に抑え、反撃を許さなかった。

 172センチの体が躍動した。1年夏からマウンドに立ち続ける山岡は、最後の夏を待ちわびていた。「緊張よりも、楽しみが大きかったです」。力みから1回はボールが上ずり先制を許したが、尻上がりにギアを上げていった。

 圧巻だったのは、5回1死。初戦で延長13回の接戦を制してきた崇徳の勢いを警戒した。中でも先頭打者の野村颯には注意を払った。「あの場面は(塁に)出したくなかった」。得意のスライダーを内角に3球続け、空振り三振を奪った。

 5回以降は得点圏にすら進塁を許さず、5安打1失点の完投勝利だ。最速は142キロを計測。だが、小川成海監督(63)は辛口の評価を下した。「直球が来ていなかった。競っているときは集中力があるけど、点差が付くと不用意になるところがある」。要求が高いのは、才能を認めるからこそだ。

 山岡の最大の武器は、体の柔軟性だ。ムチのようにしなる右腕は、幼少期に母の影響でプレーしていたバドミントンで培われた。「一番の強みなので」と、連日のストレッチが特長を最大限に引き出すための日課になっている。

 思考法にも柔らかさがある。憧れの投手は中日浅尾だ。テークバックが小さく、歩幅も狭い、独特のフォームにくぎ付けになったのは自身が不振に陥ったときだった。

 「自分は歩幅が広いけど狭い歩幅でどうやって投げるんだ、と思った」と振り返る。山岡の歩幅は6足。投手としては一般的だが172センチの山岡にとっては下半身に相当の負担がかかるという。疲労が蓄積するとバランスを崩す要因になるが「修正する方法が分かってきた」と対応力でフィジカル面をカバーしている。

 この日は、プロ注目の左腕・新庄田口も登場し、8回3安打無失点で初戦を突破した。田口も170センチと小柄ながら140キロを超える直球を操る。左右の「小さな巨人」が出陣し、広島の夏が熱を帯びてきた。【鎌田真一郎】

 ◆山岡泰輔(やまおか・たいすけ)1995年(平7)9月22日、広島県生まれ。小学2年から中野東ソフトボールスポーツ少年団に入団。瀬野川中野球部ではエースで県大会出場。瀬戸内では1年夏からベンチ入り。憧れの投手は中日浅尾。最速147キロで、球種はスライダー、カーブ、チェンジアップ。家族は父、母、妹。172センチ、70キロ。右投げ、左打ち。