<IBAF18UW杯:日本7-0ベネズエラ>◇2日◇予選1次ラウンド◇台湾・斗六

 高校日本代表の最速157キロ右腕、済美(愛媛)・安楽智大投手(2年)が衝撃の世界デビューを飾った。夜のベネズエラ戦に先発し、毎回の16三振を奪い無四球の2安打完封で快勝に導いた。ダブルヘッダーに連勝した日本は3連勝で2次ラウンド進出に大きく前進し、今日3日はチェコと対戦する。

 100球目はこん身の直球だった。9回2死、安楽はカウント1ボール2ストライクと追い込むと、森の構えるミットめがけて無心で腕を振った。「『最後の2人は三振を狙いに来い』と言われたので、最後の1球は気持ちが乗った」と、149キロの直球はバットにかすることなく、ミットに収まった。16個目の三振を空振りで奪うと“世界初勝利”をかみしめるように、はにかみながらゆっくりとマウンドから歩み降りた。

 わずか100球でベネズエラをねじ伏せ、ネット裏のスカウトをうならせた。ヤンキース、ブルージェイズ、パドレスなど米9球団と国内4球団が見つめる中、9回を2安打無四球完封。春のセンバツ5試合で772球を投げ“投げすぎ”論争を巻き起こした右腕は「日本の野球が間違っていないことを証明できた。100球でも試合を作れる。安楽が進化したという姿を見せられたんじゃないでしょうか」と胸を張った。

 制球力が光った。100球のうち、ボールゾーンに投じたのはわずか16球。この日は球速よりもスピンの利いたボールを投げようとフォームにこだわった。右足から左足へのスムーズな体重移動を意識し、テンポよく追い込むとベネズエラ打線は困惑。最速は150キロながら球威のある直球と内角にズバッと決まるスライダーで手玉に取った。

 悔しさがスピードへのこだわりを捨てさせた。今夏の甲子園大会は3回戦で敗退。「150キロの球を投げてどうして打たれるんだろうと思った。悔しくて夜も眠れなかった」と球速だけでは通用しないと反省した。高校日本代表では同学年で甲子園優勝投手の前橋育英・高橋光と同部屋になり、刺激を受けた。この日は投じなかったがフォークの握りを学び、投球の幅を広げようとした。「夏は158キロを出すという周囲の期待に応えようとした。夏を終えて勝つことが大事だと感じた」と精神的に成長した。

 2次ラウンド進出をほぼ手中におさめる勝利に「低めに集めることだけを考えたら思い描いた投球が出来た。9回で100球は今までで一番球数が少ない」と納得の表情を浮かべた。世界の「Anraku」へと羽ばたくことを予感させるような快投だった。【島根純】