<センバツ高校野球:智弁学園7-2三重>◇24日◇1回戦

 春の甲子園に新怪物が現れた。智弁学園(奈良)のドラフト上位候補、岡本和真内野手(3年)が史上19人目の1試合2本塁打をマークし、7-2で三重を下した。第1打席はバックスクリーン、第3打席は左翼席に運び、星稜(石川)時代の元ヤンキース松井秀喜氏(39)、PL学園(大阪)の「KKコンビ」らに並んだ。

 高め真っすぐ、3ボール2ストライクからの6球目だった。岡本は力いっぱい振り切った。1回2死。打球はグングン伸び、バックスクリーンに飛び込んだ。甲子園初アーチに、岡本は「相手ピッチャーのテンポが速かったが、自分のペースで打てた。強い打球をセンターに返そうという意識で振り抜いた。思わずガッツポーズが出てしまいました」と、右拳を大きく突き上げてほえた。

 6回には再びスタンドをどよめかせた。3打席目に左翼へ放った1発は、打った瞬間それと分かる一撃。高校通算59本目で、新怪物と呼ぶにふさわしいオーラを漂わせてベースを回った。主砲の活躍に、小坂将商(まさあき)監督(36)も「1本目は打って欲しいイメージがそのまま映像になった1発。本当にびっくり」と声を上ずらせた。

 昨秋は4番として近畿大会8強。しかし、あえてこの日は3番に座った。「初回に打順が回るので相手にプレッシャーをかけられるし、チャンスになる」(小坂監督)。初回2死走者なしから岡本の本塁打で先制し、狙いが的中した。

 幼少期からのスパルタ教育が実を結んだ。3歳の頃から兄道明さん(25)と自宅の座敷で素振りに励んだ。夜には窓を鏡代わりにしてフォームを確認。小学生時は100本だったが、中学生時には400~500本に増えた。兄の厳しさも増し、泣きべそをかきながら猛特訓で鍛えられた。

 甲子園デビューで見せた2発。名刺代わりには十分なインパクトだが、新怪物にとってまだ伝説の序章にすぎない。次戦は大会屈指の左腕・田嶋大樹投手(3年)擁する佐野日大(栃木)と激突する。「もう1度ベースを回れるなら回りたい。対戦する限りは勝ちたいし、1試合でも多く甲子園で野球がしたい」。“岡本劇場”の幕は開いた。【辻敦子】

 ◆岡本和真(おかもと・かずま)1996年(平8)6月30日、奈良・五條市生まれ。北宇智小1年から「カインド」で投手兼内野手として野球を始める。五條東中では「橿原磯城シニア」で投手兼三塁手。智弁学園では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒8、遠投100メートル。183センチ、95キロ。右投げ右打ち。

 ◆個人1試合最多本塁打2の大会タイ

 智弁学園・岡本が三重戦で記録。昨年の山田(敦賀気比)以来で19人目。

 ◆高校通算本塁打

 プロ入りした主な選手の3年生センバツ前の本数は85年清原和博(PL学園)41本、92年松井秀喜(星稜)42本、07年中田翔(大阪桐蔭)72本など。