<高校野球群馬大会:前橋育英7-0松井田>◇14日◇2回戦◇高崎城南球場

 夏の主役は譲らない。昨夏の甲子園で全国制覇したドラフト上位候補、前橋育英(群馬)高橋光成投手(3年)が、プロ9球団スカウトの前で5回12奪三振と快投した。今夏初戦の松井田戦に先発し、7回コールドで勝利。最速は142キロ止まりも、15アウト中12アウトを三振で奪い、連覇に向けて盤石のスタートを切った。

 復調の気配を漂わせた。高橋光がマウンドで躍動した。188センチの長身を生かしたダイナミックなフォームで思い切り投げ込む。2度の3者連続三振など、ほとんど直球で勝負した。「感覚を確かめるために」と控えめだが、威力は十分。安打を許さず、前に飛ばされた打球は三ゴロの1度。2回は先頭打者に四球を与えたが、送りバントすらさせず、力でねじ伏せた。

 日本一に輝いた1年前を思い出させるマウンドからの景色。「久しぶりという感じです。緊張しましたけど、勝ててほっとしています」と胸をなで下ろした。課題も明確だった。5回で87球を要するなど制球が定まらず、ボールが完全に抜ける場面もあった。「上体が突っ込んだのと、初戦ということで力みもありました。ボールが浮いて、フルカウントにすることもあったことがダメでした」と反省する顔には笑みがなかった。

 栄冠後の11カ月は、苦悩の道のりだった。昨秋は県大会で初戦敗退(3番手で登板)。今年1月には練習中に右手親指を骨折したが、走り込んで下半身を強化した。1日4食の食事で体重は7キロ増え、89キロに。先月6日、練習を手伝いにきた昨夏の女房役、小川駿輝捕手(19=大東大)は「(去年に比べ)ボールが重くなって、キレも増していました」と成長した点を挙げた。

 今春も県大会初戦で敗れており、新チームの公式戦初勝利。次は早くもシード校の高崎健康福祉大高崎とぶつかる。「力まずいつも通りやれば勝てる」。宮崎の招待試合で再会した済美・安楽智大投手(3年)と甲子園決勝での再会を誓い合った。深紅の優勝旗を全員で返しに行くために、難敵を倒す。【岡崎悠利】