<高校野球東東京大会:雪谷3-1東京実>◇17日◇4回戦◇神宮第2

 「都立の星」雪谷のドラフト候補右腕、鈴木優投手(3年)が、逆転を信じて、ベンチ前でキャッチボールを開始した。1点を追う9回2死。仲間を鼓舞する意味もあったが、本心は「負けたと思いました」。中前打、死球で2死一、二塁としたが、続く打者の打球は二塁正面へ。試合終了のはずが、打球をはじく。割れんばかりの大歓声の中、2死満塁から2番菅野智也内野手(3年)が逆転の3点適時二塁打を放った。鈴木は「奇跡が起きた」と、ガッツポーズを繰り返した。

 4失点完投から中1日の試合で、序盤から飛ばした。レンジャーズ・ダルビッシュを理想とする直球、レッドソックス上原と同じ縫い目に指をかけるスプリットを操った。逆転した直後の9回は、23球オール直球勝負。「最後は後悔したくなかったので、一番自信のあるストレートで攻めました」。9回9奪三振、2安打完投で、16強を決めた。

 興奮が収まらない最速145キロ右腕は、自身の覚悟を話し始めた。「プロ志望届を出します。プロに行きたいです。監督とも話はしています」。昨夏終了直後、相原健志監督(47)と面談して、すでに伝えた。進学は考えず、進路はプロ一本に絞る。指名されれば、都立高から直接プロ入りする投手は、05年の中日高江洲(府中工)以来、9年ぶり2人目になる。

 自らの夢のためにも、チームのためにも負けられない戦いは続く。03年以来の甲子園へ。全力投球を続けていく。