<全国高校野球選手権:山形中央2-0東海大四>◇19日◇2回戦

 山形にまた新たな歴史が刻まれた。山形中央が、延長10回の末、東海大四(南北海道)を下し、県勢公立校として夏の甲子園で初の2勝を挙げた。0-0で迎えた延長10回表1死三塁に、高橋隆生外野手(3年)の左前適時打で1点。さらに相手の送球ミスで1点を奪い、勝ち越した。先発左腕佐藤僚亮(2年)と右腕エース石川直也(3年)が毎回奪三振の無失点リレーで守りきった。

 延長10回の熱戦を制しても山形中央ナインは相手に敬意を払い、ガッツポーズを作らなかった。エース石川はバットと捕手のマスクを拾って渡す。整然と並び、校歌を歌う。毎日正座であいさつし、野球ができることに感謝してから練習を始める山形中央らしい、静かな喜び方だった。

 プレーに一喜一憂しない。その姿勢で東海大四エース西嶋亮太(3年)の超スローボールに対抗した。「相手にするな」という庄司秀幸監督(38)の指示通り、初回の攻撃から「超」ではない普通のスローボールを投げられても、誰も手を出さなかった。7回2死、6番中村颯(3年)への初球。この日唯一となる山なりの超スローボールが出ると、観客席から「おおー」と、どよめきが起こった。それでもチームに動揺は無かった。

 試合が動いたのは0-0の延長10回表。1死三塁のチャンスで高橋隆は「石川を楽にしてあげたかった」と初球のストレートを狙い打ちし、1点をもぎとった。すかさず二盗を試みると、それが捕手の悪送球、さらにバックアップの中堅手の悪送球を招き、50メートル6秒の俊足で一気に本塁にかえってきた。13年春のセンバツでは2戦ともスタメンも8打数無安打。この日、途中出場の高橋隆は「3年の意地をみせられた。山形県の代表として打席に立った」と胸を張った。

 春夏通じ4度目の甲子園。庄司監督が「浮ついていた」という過去3度とは一変して、今年は山形大会終了後も、午前、午後と2部練習を行ってきた。大阪入り後も、割り当て練習の他に、宿泊先でゴムチューブを使ったトレーニングに励むなど時間を惜しむように練習した。庄司監督は「2勝したことより、1戦1戦(選手が)成長してくれているのがうれしい」と充実感にあふれていた。

 21日の3回戦では、8強入りをかけて高崎健康福祉大高崎(群馬)と対戦する。「まだまだこれからです」と高橋隆。本気で日本一を目指す集団となった山形中央が、頂点まで駆け上がる。【高場泉穂】