<センバツ高校野球:平安0-8聖望学園>◇1日◇準々決勝

 初出場の聖望学園(埼玉)が、大塚椋司投手(3年)の11奪三振の力投で、4強進出を決めた。5回までパーフェクト投球で、現校名最後の甲子園になる平安(京都)を8-0で破った。千葉経大付は延長11回サヨナラで、長野日大を下して初の4強入り。ジャンボ右腕・斎藤圭祐投手(3年)は7失点(自責4)と苦しんだが、粘り抜いた。3日の準決勝は大塚対斎藤の関東剛腕対決になる。

 投げるたびに勢いを増す聖望学園の右腕大塚が突然マウンドを降りた。完封目前の9回2死無走者。石田直人(3年)に最後を任せ一塁に入った。それでも主役は譲らない。一塁ゴロ。ウイニングボールをつかんだ。「打者の足が速いんで焦りました」。自らベースを踏んで、4強入りを決めた。笑みがはじけた。

 5回まではパーフェクトだった。打者15人から10奪三振。最速141キロの速球で内角をえぐり、カットボールも切れた。6回、先頭打者の打球が遊撃内野安打となって記録は消えた。8点もリードしている。だが、集中力は途切れなかった。「0-0の気持ちでした。落ち着いて、低めに投げようと思いました」。履正社(大阪)戦の7回、6連打を浴びた失敗が生きた。

 終わってみれば8回2/3を被安打2の11奪三振。あと1人の交代を岡本幹成監督(46)は「連戦になるんで石田を使いたかった。大塚?

 いいスよ、と言ってました」と説明した。同監督からは試合前、こんなゲキも飛んでいた。「野球でメシが食いたかったら、しっかり頑張れ」。

 大塚はプロ入りを望んでいる。「できたらいいな、ぐらいですけど。オヤジが死んでも野球を続けさせてくれた。自分で使えるお金も野球に回してくれた。それを親に返したいです」。小学6年のときに父明世さん(享年52)が他界した。母成美さん(45)は進路相談で学校を訪れた際、担任から我が子のこんな思いを聞かされ、涙が止まらなかったという。

 「ここまできたら優勝しかないです。でも挑戦者の気持ちで一戦必勝です」。恩返しの思いを胸に晴れ舞台に挑んだエースが、頂点まであと2勝と迫った。【米谷輝昭】