<センバツ高校野球:大垣日大10-1北照>◇31日◇準々決勝

 北海道代表の北照はベスト4進出はならなかった。3月30日の2回戦自由ケ丘(福岡)戦で、右手親指の負傷もあり途中降板したエース又野知弥(3年)が志願の先発も、1回途中3失点で降板。2番手千葉竜樹(3年)も打ち込まれ3回までに大量10点を奪われ、昨秋の神宮大会優勝校に屈した。次は、センバツ8強入りを自信に、春夏連続の甲子園出場を目指す夏に向かう。

 気丈に先発マウンドに上がった又野が、わずか24球で唇をかみしめ右翼の守備位置に移った。1回、大垣日大の打者2人を中飛、投ゴロに打ち取り簡単に2死を取ったが、痛めていた右手親指の感覚が微妙に違うことを感じていた。直球の最速は120キロ台前半止まり。甲子園で13回1/3連続無失点を続けていた最速142キロ右腕の面影はなかった。

 本来の球威がない直球は抑えも利かずシュート回転して大きく外れた。得意のスライダーもキレが見られなかった。2者連続四球の後、5番小尾に真ん中高めに入った直球を中前に運ばれて2点を先取された。その後も四球、安打を許し、打者7人に投げ終えたところで無念の降板となった。

 試合後、又野は「悔いの残る試合になりました。練習から指にボールがかからず。監督が投げさせてくれたのに悔しい」と声を振り絞るように話した。3月30日の2回戦で一塁帰塁の際、ヘッドスライディングし、右手親指をベースに突いた。試合後の精密検査では骨に異常なしとの診断。痛めた指をアイシングし、夕方には宿舎で西田捕手に「投げさせてくれ」と話し、投手担当でコンディショニングコーチの大前隆司さん(29)にはバッテリーでこの日の登板を懇願した。

 一夜明けて回復を期待したが、微妙な感覚のズレは残っていた。河上敬也監督(50)は「バッテリーが強く要望したので…」と熟考の末、甲子園入り後の試合前練習で先発を言い渡した。だが、本調子にないエースの姿に、将来を考え交代の決断は早かった。

 2回戦に続き、緊急登板した千葉も勢いに乗った相手打線を止められなかった。3回までに10点を失い劣勢に回った。西田主将が試合前に話していた「勝てるとしたら接戦」という展開には持ち込めなかった。

 悔しい結末となったが、チームの10年ぶりの甲子園は、初のベスト8という結果に加え、夏への収穫をもたらした。又野のスライダーは全国でも通用することを証明できた。千葉も105キロ前後のカーブと直球のコンビネーションで大垣日大の強力打線を4回以降は無安打、無得点に抑えた。劣勢ムードの中でも笑顔でチームを引っ張った。千葉は「甲子園はすごいところ、又野とまたここに戻ってきます。エースはやはり又野ですよ」と夏に目を向けた。雪辱を胸に、再びチャレンジする。【中尾猛】