<高校野球京都大会>◇23日◇4回戦

 福知山成美の左腕・島本浩也投手(2年)が6回2失点。柳ケ浦バス横転事故で他界した吉川将聖さん(16)の元チームメートが、花園を4-2で破り8強入りした。

 天国から、背中を押された気がした。福知山成美の控え左腕・島本が今大会初先発。緊張から制球を乱して1回に1点を失う。2回も2点目を奪われ、なお2死一、二塁。ここで亡き球友の顔を、頭に浮かべた。不思議と気持ちが落ち着いた。次打者を遊ゴロに打ち取る。「あのピンチは吉川の力を借りました」。3回以降は1安打のみ。6回2失点で8強入りに貢献した背番号12は、小さく笑った。

 バス横転事故で亡くなった柳ケ浦の吉川さんと中学時代に奈良の「橿原コンドル」で2年間バッテリーを組んでいた。印象深いのは2年秋の近畿大会1回戦。4番捕手の吉川さんが先制打、島本が7回2失点で4-2で三田ヤングに勝った。場所は甲子園だった。「あそこで唯一勝てた試合なので」と鮮明に覚えている。

 私生活でも仲がよかった。カラオケやプールにも一緒に行った。「吉川はキャプテンだったし、みんなからの信頼感があった。優しくて、活発だった」。卒業時に「次は甲子園で会おう」と約束を交わしていた。だから悲報を聞いた時は信じられなかった。「絶対甲子園に行って、あいつがかなえられなかった夢を、僕がかなえたい」。2人で夢見た聖地まで、あと3勝だ。【大池和幸】