<高校野球千葉大会>◇21日◇5回戦

 千葉のプロ注目の捕手、習志野・山下斐紹(あやつぐ=3年)の勢いが止まらない。この日は松戸国際相手の3回、チームが3点を奪って逆転した直後にダメ押しの2ランをかっ飛ばした。今大会はこれで10打数7安打の8打点。試合は6-3で勝利し、主砲がバットで8強進出を導いた。

 打った瞬間、習志野・山下の右手が自然と上がり、満面の笑みでベースを回った。3回裏、1点を勝ち越し、なおも2死三塁の場面だった。カウント2-2からの内角の直球を引っ張ると、打球は一気に右翼スタンド中段(推定110メートル)に突き刺さった。「何も考えず、来た球を打った」という2ランは自身通算34本目、松戸国際を突き放す価値ある一打となった

 初戦からバットの勢いが止まらない。今大会通算はこれで10打数7安打の打率7割で8打点をたたき出している。相手校のマークも厳しくなり、投手は内をついてくる。4試合で5死球がそれを物語るが、腰を引くようなシーンはどこにもない。逆に主将として「(死球でも)勝利のために出塁したい」と貪欲(どんよく)な姿勢を見せる。

 この日のスタンドには国内メジャー含め3球団7人のスカウトが陣取った。守りについた3回無死二塁の場面では三塁線に転がった送りバントをフットワーク良く捕球すると、三塁へ矢のような送球をみせ進塁を許さなかった。中日の石井スカウトは「軽快なフットワークに驚いた。走攻守の3拍子そろっていて、間違いなく(高校生)東日本NO・1捕手」と話した。

 この日は山下が小学時代に所属した少年野球チーム「磯辺シーグルス」のコーチ谷口光一さん(53)も応援に駆けつけた。「肩は良かったけど、まさかここまで強肩になるとは…。4年の時に、足が速いから左打ちに変えて良かった」と喜んだ。山下の帽子のつばには「夢舞台」と書いてある。試合後はいつも通り「1つ1つ勝つだけ」と話したが、その舞台まであと3つと迫った。【峯岸佑樹】