2016年のメジャーリーグは、カブスが108年ぶりの世界一に輝き、幕を閉じました。好勝負続きだったワールドシリーズは、第7戦までもつれ込み、最後は延長戦の末、決着が付く激闘でした。歓喜に沸くカブスナインをよそに、涙をのんだインディアンスのベンチには、ぼうぜんとした表情の選手が並んでいました。
その一方で、試合後の会見に臨んだインディアンスのテリー・フランコナ監督(57)は、記者団からの質問を受ける前に、自ら口を開きました。
「まず、シカゴ・カブス、ジョー・マドン(監督)、セオ(エプスタイン=社長)、ジェド(ホイヤー=GM)、Mr.リケット(オーナー)、そして組織全体を祝福したい。彼らは多くの祝福を受けるにふさわしいと思う」。
頂点まであと1歩のところまでたどり着きながら敗れた無念さは、想像にあまりあります。悔いもあれば、グチをこぼしたくなっても不思議ではありません。それでも、真っ先に勝者をたたえる姿勢は、「ゲームセット」というよりも、ラグビーの「ノーサイド」の精神に近いものでした。
一方、勝ったカブスのジョー・マドン監督(62)も、開口一番、敗れたインディアンスの健闘を祝福し、さらに続けました。
「勝つことが難しいシリーズだった。ただ、我々の野球界が前へ進むために、この戦いがいいことになると信じたい。我々は単にプレーするだけでなく、若いファンの心をつかみたいと思ってやっている。もちろん、勝ったから言うわけではない。ただ、それが本音なんだ」。
メジャーには30人の現役監督がいますが、昨年、ある米メディアが行った選手アンケートによると、フランコナ、マドンの両監督は「一緒に戦いたい監督」のトップ3にランクされていました。ゲームメーク、選手起用など戦術面の秀逸さはもちろんでしょうが、この2人に共通するのは、選手やスタッフとのコミュニケーション能力にたけているところと言われます。試合の指揮を執るだけでなく、人格者として尊敬され、愛されているからこそ、両チームの結束は固かったのでしょう。
自軍の選手やスタッフをリスペクトし、相手をリスペクトし、さらに球界全体の発展を願う姿勢-。
すべての戦いを終えた両監督の言葉を聞くと、ワールドシリーズの大舞台に立てた、本当の理由が見えたような気がします。
【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)



