【テンピ(米アリゾナ州)23日(日本時間24日)=大塚仁】エンゼルス松井秀喜外野手(35)が新天地でのキャンプ初日から存在感を見せつけた。打っては8割の力で臨んだフリー打撃で44スイング中1本の柵越えを放ち、トリー・ハンター外野手(34)が自分の車に当たらないかと心配するほどの打球も見られた。待望の守備練習にも参加し、基本的なメニューを無難にこなした。攻守にはつらつとした動きを見せ、上々のスタートとなった。

 あいさつ代わりの1発に悲鳴まで上がった。フリー打撃のラスト44スイング目。狙い澄ました松井の大きな当たりが右翼を襲った。「おれの車に当てないでくれ!」と思わず叫んだのはエ軍の大黒柱ハンター。それもそのはず、右翼フェンスの向こう側にはハンターの愛車ベントレーが止まっていたのだ。この日放った唯一の柵越えは、新車価格で4000万円は下らない最高級車とニアミスした。

 ハンターが練習後に振り返った。「あの近くだったから怖かった。止める位置を変えないといけないかもしれない。車に当てられたら泣いちゃうよ」。フェンスの上は防護ネットが張られており、すき間はあるが実際に車が被害に遭うことは少ない。松井も「あそこは大丈夫。おれの車の方が危ないよ」と気にも留めなかった。ハンターの悲鳴は多分に冗談が含まれていたが、それほどインパクトは十分だった。

 久々の守備練習も軽快にこなした。他の選手と同様に初日とあってごく基本的な内容にとどまったが、約10メートル離れた位置から前後左右に投げられた球を捕球するメニューと、ゴロを捕って投げる基本練習を12球ずつ消化。その後のフライ捕球は外れたが、「(感覚は)忘れちゃいましたね。でも悪くないと思う」と胸をなで下ろした。

 新天地でのキャンプ初日は笑顔が絶えなかった。アリゾナ入り後は3日も雨が続いたが、この日は快晴に恵まれた。「これがイメージしていたアリゾナ。素晴らしい天気だったんで良かった。ユニホームを着て、チームメートと一緒に練習すると(エ軍の一員という)実感が出てくる。チームは家庭的な雰囲気ですよね」。ソーシア監督は松井について「基本的には毎日中軸で使いたい」と話し、クリーンアップでのフル出場を期待している。それが難しくないと思わせるほど、新チームでの初練習は攻守にわたってはつらつとしていた。