将来の侍候補が、才能の片りんを見せつけた。ＤｅＮＡ関根大気外野手（１９）がオープン戦１号を含む３安打と打ちまくった。レギュラー候補でありながら前日（１６日）までは１９打数２安打の１割５厘と低迷し、２軍降格の“最後通告”を受けた試合で一発回答。初の開幕１軍はもちろん、最後までスタメン争いにも食らいついていく。

　高卒２年目だが派手に喜ぶポーズはない。関根は表情を変えずにダイヤモンドを１周し、生還したときにやっと表情を緩めただけだった。

　７回１死で迎えた４打席目、カウント２－１からの４球目、内寄り高めの直球を右翼席中段まで飛ばした。「ホッとしました。きのう４打席打てなくて、もう２軍かなと思っていたらチャンスがもらえた」。打球の行方は追っていない。感触だけが残っていた。

　試合前。打撃練習を終えると大村打撃コーチに呼び止められた。「今日が最後だと思え。そのくらいの気持ちでやれ」と叱咤（しった）が響いた。高卒１年目の昨年、２軍監督として見守ってくれた同コーチ。自然と言葉は厳しくなる。ただ、周囲には「将来中心になる選手。侍に入る選手なんだ。今はもどかしいだろう。でも、この壁を乗り越えなきゃいけないんだ」と言う。高い能力も心の強さも分かっているから、甘やかすことがないだけだ。

　１回の１打席目は無死一塁でたたきつける三塁内野安打でバスターエンドランを決めた。３回の第２打席では能見の内寄り１４１キロ速球をライナーで右前に運んだ。「内野安打はたまたまだけど、ついているのかなと思えた。（右前打は）しっかりした当たりがずっとなかったので、やっと打てました」と、つかんだ手ごたえが本塁打につながった。昨年はイースタンで６本塁打を放っている。ミートが特長でも長打力も秘めている。

　現時点で中堅レギュラーは４年目の桑原が守備面を含めリードしている。それでも中畑監督は関根の打撃に注目している。５日の試合前にはマンツーマンで指導する姿があった。上からたたきつけライナーを打てというアドバイスが実った。「何か持っている。チームに勢いを与えるね。センター争いをしている２人が、いい刺激をし合っている。最後まで激しい競争をしてほしい」と、レベルアップの相乗効果を期待する。開幕まで９日。答えはまだ出ていない。【矢後洋一】