重みを感じながら打った。ヤクルト奥村展征内野手(19)が、阪神との練習試合で1軍の実戦では初安打となるタイムリー二塁打を放った。昨年オフにヤクルトから巨人へFA移籍した相川亮二捕手(38)の人的補償で新加入。昨春キャンプで巨人原辰徳監督(56)から助言を受けて増量したバットで結果を残した。育成を優先させるため今日19日からは2軍に合流するが、奥村にとっては大きな1歩となった。

 30グラムの重みを感じて打った。7回無死三塁、フルカウントからの8球目。奥村は、松田の143キロ内角低め直球を力の限り引っ張った。一塁線を破る適時二塁打。「昨日は少し縮こまっていた。気持ちは楽にいけた」。前日17日、巨人との練習試合でプロ入り初の1軍出場を飾るも、2打数無安打。2試合目で出たヒット、打点に「とにかくうれしい」と喜んだ。

 振り抜いたバットの重さはあの日から変わらない。昨年の巨人宮崎キャンプの2月9日。2軍の練習を視察に来た原監督から「バットの重さを使って、体全体でボールを飛ばしてみなさい。900グラム以上を使ってみたら」と指導を受けた。上半身の力に頼りがちだったフォームにヒントを与えてくれた。当時使用していた重さから30グラム増の910グラムのものに変更した。

 あれから1年が過ぎた。高卒2年目で経験した人的補償は予想外の出来事。ただ前向きにプロでの活躍を夢見ている。1月15日、家族とともに川崎市のジャイアンツ寮から埼玉・戸田市にあるヤクルト戸田寮に引っ越した。車中で普段は物静かな父伸一さん(46)から「いろんな人への感謝の気持ちを忘れずに頑張りなさい」と助言を受けた。

 奥村 父があんなことを言うとはびっくりしました。確かにプロ入りできたのは、巨人のおかげ。チームは変わってもプロで戦うことは同じだし、感謝の気持ちを忘れずに頑張っていきます。

 真中監督は「自分のスイングが出来ている」と評価した。ただ育成を優先させるために2軍合流が決まった。巨人では、1軍デビューが果たせなかったが、新たな舞台で躍動する日は近いはずだ。30グラムの感謝を携え、再び1軍昇格を目指す。【栗田尚樹】

 ◆奥村展征(おくむら・のぶゆき)1995年(平7)5月26日、滋賀・湖南市生まれ。日大山形では1年春から正二塁手。3年夏は4番・遊撃で甲子園4強入り。13年ドラフト4位で巨人入り。昨季は2軍で86試合に出場、打率2割1分2厘、2本塁打、20打点。178センチ、72キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸560万円。