打っても強いが、守っても強い。DeNAが1点差を逃げ切り、07年5月3日以来の単独首位に躍り出た。先発高崎健太郎(29)が5回の満塁機を断つなど、再三のピンチをしのいで7回無失点で今季初勝利。8回からは継投で加賀繁(29)、田中健二朗(25)とつなぎ、最後はルーキー守護神、小さな大魔神・山崎康晃(22)が締め3セーブ目を挙げた。接戦でも負けないベイスターズの今年は、ひと味違う。

 最後のマウンドに立っていたのは新人山崎康だった。9回2死。2-2からのシュートに、鳥谷がハーフスイングした。球審にスイングの確認を要求するように、右手人さし指を向ける気迫のポーズでマウンドを降りた。わずか1点差だったが、ベンチに戻ると「メッチャ楽しかった」と言って笑ってみせた。強心臓は並の新人じゃない。

 薄氷を踏むような継投だった。中畑監督は「監督采配の醍醐味(だいごみ)」と言うとおり、鮮やかに決まった。8回は2番手の加賀が無死二、三塁のピンチを背負ったが、外国人キラーのため続投。ゴメスの内野ゴロで1点を許すが、マートンを中飛に抑えたところで田中を送り込んだ。左の福留を歩かせたが右左は、もはや関係ない。そのままマウンドを託し上本を中飛に仕留めた。

 勝利の方程式が見えてきた。8回のセットアッパーが新外国人のエレラだ。ストッパーが山崎康でEとY。7回までは国吉(K)に期待をかけたが不調で降格したため、代わって重責を担うのが健二朗(K)と加賀(K)だ。小杉(K)を加えて誰が入ってもKEYになる。終盤の鍵を握るリレーの完成だ。

 田中は3連投だった。2死二、三塁のピンチだったが意気に感じてマウンドに上った。「疲れよりチームの勢いの中でやれる。その気持ちの高ぶりがいいんです」と充実した表情を見せた。2月28日に母巳路子さんが47歳の若さで急死した。「急すぎて受け止めることができなかった」と精神的に大きなダメージを受けた。それでも「今年はターニングポイントの年になる。最高の報告をしたい」と、不退転の決意を胸に刻んで戦っている。

 中畑監督にとっては、グリエルの契約解除が幸いした。エレラが使えるからだ。「グリエルが来たからって、勝利に直結する中継ぎを簡単に外せない。だからよかった」と言った。前日まで連投していたため、中日との直接対決に温存することもできた。「健二朗は登板ごとに応えてくれる。本当は1日休ませたかったが。山崎も抑えきれる投球ができるようになった。連投で結果を出せば(抑えで)決まり」と合格点を出した。これで単独首位だ。「えっ! それでこんなに(報道陣が)集まってくれたの? ありがと、ありがと」と感謝。最後は「明日から中日さんと直接ぶつかる」と、気持ちを引き締め直した。【矢後洋一】