腕振って、白星量産だ! 阪神藤浪晋太郎投手(21)が25日の対戦ですっぽ抜けの内角球を投じ、あわや乱闘を引き起こした広島黒田博樹投手(40)から思い切って投げてこいと「おとこ気エール」を受けた。対戦相手も認める大器の片りんを発揮できず、巨人戦と広島戦に登板した4月は4戦未勝利。21歳右腕は5月の大逆襲を誓った。

 マウンド方向に歩み寄り、荒々しく言葉をはき出したあの鬼の形相ではない。広島黒田が球界の大先輩として口を開いた。両チームが入り乱れ、あわや乱闘の一触即発から「2夜明け」。2敗目を喫した阪神藤浪に、ほかならぬおとこ気右腕がエールを送った。

 「彼に対してどうのこうのはない。一生懸命に戦っているときに起こったこと。次、対戦することがあれば、腕を思い切り振って投げてくればいい。僕も若いころに頭に当ててしまったことがある。投手の気持ちも分かる。僕も当てたくて投げたわけではない。ただそれを乗り越えていかないと、強くはなれない」

 腕を振ってこい-。21歳のあすを思っての後押しだった。2球連続で黒田をのけぞらした胸元への球に関して試合後の藤浪は「バントをさせようと、先に走りだしてしまった。しっかり投げないまま走りだして、ああいうボールになってしまった」と反省していた。黒田もプロ3年目の99年4月14日巨人戦で杉山の頭部へ死球を与えたことがあった。24歳の経験だった。

 オフに藤浪は広島前田と自主トレをともにした。チームの垣根を越え、スケールアップに取り組んだ。球界を代表する大型投手にもなり得る力の持ち主。40歳右腕の一言一言には、藤浪への期待が込められていた。

 あの2球を生かしていけばいい。藤浪は4月、4試合に登板して未勝利に終わった。開幕カード3戦目の3月29日中日戦以来、白星から遠ざかっている。

 藤浪 もちろんそれは思っている。回数は投げられているけど、勝ちはついていない。(5月は)もう少し、しっかり投げたいなと思います。

 藤浪自身も重々分かっている。粘りきれなかった25日のマツダスタジアムは今季初めての中5日でカード初戦を任された。その右腕に首脳陣の期待が懸かっているのは間違いないだろう。「悪いなりに試合は作れているけど、去年より失点は多い。もう少しきちんとできることをしていきたい。チーム状況もありますし、今は我慢して投げていくことだと思う。粘り強く投げていきたい」。できること、とはもちろん、腕を振り、力強い投球をすること。5月が始まる。藤浪の逆襲も始まる。【宮崎えり子】

 ◆あわや乱闘VTR 25日マツダスタジアムで藤浪と黒田が先発。1-1同点の2回裏1死一塁でバントの構えをする9番黒田に対し、藤浪は1ボールから2球連続ですっぽ抜け。146キロ直球が肩口を襲い、143キロ直球が内角高めに浮いた。2球とものけぞって死球を回避した黒田は「戦う姿勢というのも見せたかった」とマウンドに詰め寄る。藤浪は帽子を取って謝罪するも、両軍ナイン、首脳陣がベンチを飛び出し、ホーム付近でにらみ合った。