3万超の観衆から浴びた「お帰りなさい」コールに、お立ち台の広島新井貴浩内野手(38)は帽子を取り、深々と頭を下げた。「本当夢みたいで、最高です!」。球団初の初回10得点を呼ぶ2点先制打など3安打5打点。今季最多13得点の大勝に貢献した。

 4番のバットが記録的猛攻の扉を開けた。1回1死一、二塁。追い込まれながら内角スライダーに反応。両肘を畳み、素早く体を回転させて左翼線にタイムリー。「何とか走者をかえそうという気持ちだった。ヒットになって良かった」。なおも、2死二塁から梵が適時二塁打。前日守備でミスをした鈴木誠が左翼への2ランで続くと、会沢の中前打で巨人杉内をマウンドから引きずり降ろす。それでも、まだ終わらない。

 代わった笠原にも攻撃の手を緩めず、2死一、二塁から1番田中から4番新井まで4者連続適時打。1回だけで打者14人、9安打で10点を奪った。インフィールドフライ落球サヨナラ勝利から一夜明け、勢いはさらに増していた。

 マツダスタジアムは今季最多3万1798人で埋まり、たくさんの子どもたちが声をからした。「こどもの日」の特別企画として、この日はイニング間にアニメソングが球場内に流された。だが、赤いユニホームを着た子どもたちを何より魅了したのは、巨人をやっつけた赤ヘル戦士だった。

 新井も、ミスター赤ヘルの山本浩二を見てプロの世界を夢見た野球少年。3回にも適時打を放ち5打点を挙げたヒーローが、子どもたちに最高の思い出をつくった。「カープファンにとって、僕にとっていい1日になって良かった」。充実の笑みが輝いていた。【前原淳】

 ▼広島が初回に10得点。広島の1イニング2ケタ得点は04年8月19日横浜戦の8回に10点を挙げて以来、11年ぶり8度目で、初回にマークしたのは球団史上初めて。広島が巨人戦で13得点以上は05年8月2日、13-12で延長11回サヨナラ勝ちして以来になる。