復帰へ大きな1歩を踏み出した。広島の黒田博樹投手(40)が10日、出場選手登録を抹消されて以降初めてブルペンでの投球を行った。マツダスタジアム室内でのブルペン投球を報道陣に公開することはなかったが、心地いいミット音が球場外まで響いていた。変化球を交えて約80球を投げたとみられる。当初の予定通り、15日DeNA戦の先発復帰が見えてきた。6連勝を飾ったチームへ、さらなる朗報だ。

 報道陣が立ち入ることができない室内ブルペンから乾いたミット音が一定のテンポで鳴り響いた。投球の間隔は、ほぼ20秒以内。長くても25秒というテンポだ。真っすぐだけではない。カーブやスライダーなどの変化球も投じた。球数は約80球とみられる。練習後、報道陣の前に出てきたのは、1軍首脳陣への報告を行う前の段階。それだけに本人は、コメントを控えた。しかし、速いテンポと心地いいミット音、そして投じた球数が、復帰登板への何よりのデモンストレーションとなった。

 この日、球場入りの表情はやや硬かった。今月3日、開幕直後から感じていた右足くるぶしの痛みが原因で登録を抹消された。ちょうど1週間。特に痛みを感じる傾斜を使ったブルペンでの投球が、復帰を決断する材料となる。この日を迎えるまで最善を尽くした。黒田は「40歳になると気持ちだけでカバーできるものではないことは受け入れないといけない。それとも戦っていかないといけない」と話していた。7日には薬を変えて痛み止めの注射を打ち、肩肘や投球フォームを鈍らせないため、キャッチボールは継続してきた。患部の良化は、この日の投球再開前の笑顔からもうかがえた。

 1日ヤクルト戦以来となった投球で響かせたミット音に、耳を傾けるファンが、球場外に10人以上集まった。誰もが黒田の復帰を待ちわびている。報告を受けた緒方監督は「頭の中にプランは立てている。正式には明日(11日)」と明言を避けたが、復帰のときは近い。連勝街道を突き進む広島ナインも、頼れる大黒柱の帰りを待っている。【前原淳】

<広島黒田の経過>

 ◆4月27日 広島市内で検査を受け「右腓骨(ひこつ)筋腱(けん)周囲炎」と診断される。

 ◆5月1日 ヤクルト戦に先発し、6回6安打5失点で2敗目。「やられたら、やり返すしかない」。

 ◆同3日 出場選手登録を抹消される。

 ◆同4日 練習再開。最長60メートル、71球のキャッチボール。「登録抹消された以上、最短で戻らないといけない気持ちでいる」。

 ◆同7日 広島市内の病院で再検査。前回と同じ診断結果。

 ◆同9日 ランニング再開。

 ◆同10日 ブルペン入り。変化球を交えて80球。