19歳が歴史的なスピードで本塁打を量産だ。西武森友哉捕手(19)が「日本生命セ・パ交流戦」中日戦で今季2度目の1試合2発で10、11号を放ち、高卒2年目で2ケタ本塁打に到達。日本ハム大谷をはじめ、松井、清原、掛布らレジェンドたちに肩を並べた。チーム54試合目での10号突破は、2リーグ制後、4番目のハイペース。若き大砲が歴史を塗り替える勢いで打ちまくり、チームの勝利に貢献した。

 迷いは吹き飛んでいた。ミートの意識を高めつつ、フルスイングする。いつもの森の姿だった。4回。中日山井の内角低めの140キロ直球を「来た球を思い切り打つ」と完璧に捉えた。滞空時間の長い一打が右翼席前列で跳ねた。高卒2年目で10号。大谷や松井、清原ら数々のレジェンドたちに肩を並べた瞬間だった。「すごく光栄です」と高みに到達した感想をシンプルに口にした。

 自身初の交流戦に入り、あえいでいた。前日までは23打数3安打で打率1割3分。セ・リーグの球団は苦手とする緩急を徹底的に突いてきた。「配球がパ・リーグと違って打ちにくかった」。前夜の一戦では急造コンバートの右翼手で懸念されていたミスが起きた。右前打を後逸し、2点目を献上した。首脳陣も覚悟の上で仲間からも責める声はなかったが「ああいう場面でのエラーはやはり悔しかった」と背負った。だが1日で清算。並の19歳ではない。

 野球人にも衝撃を与え続けている。5月12日の日本ハム戦。2回の打席で真芯を捉えた。タイミングだけが早すぎた。だが打球は異常な飛距離を出し、一塁側後方の上部にある看板にぶち当たった。翌日、宮地打撃コーチはOBで評論家の西崎幸広氏に「あれ、とんでもなく飛んでいたな。140メートル以上、行っているだろう」と言われ、「確かに言われてみれば」と一打を回想した。「友哉に感触を確かめたら『あれは会心でしたね』と言っていた。フェアゾーンだったら…」と空想するほどだった。

 空想を現実に変えたかのような2発目だった。8回2死、左腕岡田のスライダーを広いナゴヤドームのバックスクリーンまで運んだ。本拠地以外で初の中越え弾は130メートル。「少し泳がされたけど、しっかりスイングできた」と納得した。

 6回無死二塁ではプロ初の敬遠も受けた。昨年のセ・リーグ最多勝の山井に勝負の選択肢を与えなかった。場内からブーイングも飛んだが「四球なので出塁できるのは、ありがたいこと」と冷静だ。

 地に足がついている。冒頭の「すごく光栄です」に「でも」と続けた。「自分はホームランバッターじゃない。これからもホームランを狙うことなく、明日も逆方向に強い打球を打ち、単打を積み重ねていければ」。2年目の成長曲線は想像を超えている。【広重竜太郎】

 ▼森が10、11号本塁打。1試合2本塁打は4月15日以来2度目。高卒2年目以内に2ケタ本塁打は2リーグ制後、14年大谷(日本ハム)以来17人、23度目。17人中チーム54試合目の10号到達は、53年中西(西鉄=39試合目)豊田(西鉄=41試合目)87年清原(西武=48試合目)に次いで2リーグ制後4番目のペース。このペースを維持すると143試合では29本塁打となる。