七夕の夜にベイスターズの願いがかなった。DeNAは投打がかみ合い、広島黒田に土をつけた。1回に梶谷、筒香の連続適時打で2点を先制すると、先発の久保康友投手(34)が8回1失点の好投で6勝目をマーク。9回は小さな大魔神こと守護神の山崎康晃投手(22)が締め、球団の新人記録に並ぶ21セーブ目を挙げた。中畑清監督(61)も「七夕はスターだからね。星の中で勝利をもぎ取れたことは大きい」と目尻を下げた。

 広島の夜空にきらりと星が光った。9回。役目をまっとうした久保はゆったりとした表情でマウンドの山崎康を見つめた。最後の打者、代打松山を空振り三振に斬り捨て、勝利を決めるとハイタッチの列に加わった。「黒田さんがいいテンポ、リズムであらためてすごいなと思った。それに自分も乗らせてもらった」とロースコアの試合を投げ合った広島黒田の名前を挙げながら恐縮した。

 言葉とは裏腹に大投手に名前負けしない巧みな投球術で勝利を呼び込んだ。低めを丁寧に突き、走者を背負っても、1秒以下の超高速クイックで相手打者を翻弄(ほんろう)。1回、5回の勝負の分岐点で、併殺に仕留めるなど、ピンチの芽を摘んだ。7回には2死二塁で迎えた田中に対し、カウント1-2から外角低めいっぱいに、この日最速の147キロ直球を決めて見逃し三振に沈めた。「体の状態も良かった。あそこはピッと力を入れた」と納得顔で振り返った。

 星をイメージするベイスターズだけに七夕の夜は特別な思いを込めた。中畑監督は「願い事は『いでよ、ビッグイニング』だな。あとは序盤の得点が欲しい。チームに勢いがつくからね」。験担ぎやジンクスには一切の興味を示さない久保は「幼稚園の時に横の友達のを見て、なんか書いたよ。何を書いたかは覚えてないけどね…」と“らしさ”を発揮。エースとして、チームの願いをマウンドでかなえてみせた。

 中畑監督が切望したビッグイニングはならなかったが、3カード連続で初戦の勝利を自力でもぎ取った。「黒田の内容も良かった。その中で緊張感があるゲームで勝ち試合をつくれたことは大きい」と指揮官。8回をわずか91球で片付けた久保は「借金を1つずつ減らして貯金を1つずつ殖やしていきたい」とシンプルにまとめた。首位巨人まで1・5ゲーム差の4位に浮上。もっと、でっかい願い事をかなえさせるチャンスは十分になる。【為田聡史】