超新星が現れた。育成出身左腕のDeNA砂田毅樹投手(19)が5回4安打無失点でプロ初勝利を飾り、チームを今月初のAクラス3位に引き上げた。6月に支配下登録後、初登板した際は、中畑清監督(61)から「ダメもとでいい」と言って送り出されたが、この日は堂々の投球で赤ヘル打線を封じ込めた。球団史上、10代左腕の勝利は88年の野村弘樹以来27年ぶり。チームも2連勝で4カードぶりの勝ち越しを決め、混セを演出する。

 ウイニングボールを砂田が握りしめた。中畑監督に抱擁されながらカメラのストロボを全身で浴びる。「うれしいです。とりあえず、一安心です。もっと早く勝てたかなという思いもあるけど、順調にきていると思います」と初々しく笑った。

 プロ4戦目の先発マウンドで確かな成長曲線を描いた。「1つ1つの試合で得られるものはたくさんあった。今まで1球に泣いてきているので、今日は甘い球が絶対にないようにと意識した」。1回を除いて毎回走者を背負ったが動じない。要所で決め球のスクリューと、横滑りする独特の直球がさえた。5回を投げ、許した4安打は全て単打。3回は失策も絡んで2死一、三塁のピンチを招いたが、シアーホルツを三ゴロに仕留めた。打っても4回に中前に運んでプロ初安打、初打点と自らを援護した。

 剛速球を持たない高卒左腕は自他共に認める「大人の投球術」を生命線にしている。大ベテランで同じ高卒でプロ入りした三浦から6月下旬の遠征で食事に誘われた。「三浦さんからちょっとだけ褒められたのがうれしかったです」とはにかんだ。そんな19歳に対し、三浦は驚きと感心を口にした。

 三浦 俺なんて19歳の頃は「おりゃー」って投げてるだけだったから。俺も砂田もめちゃくちゃ速い球を持っているわけではない。あいつは既に、コースを出し入れして勝負しないといけないという、自分のスタイルを知っている。

 この日も最速138キロの直球を軸球に組み立てた。砂田は「三浦さんからも『ここからが大事』という言葉をもらった。自分でもここからが本当の勝負だと思います」と先を見据えた。持ち味の内角を突く強気の投球が評価され、6月に支配下契約を勝ち取った。チームは先発左腕が昨季1勝もできず今季も未勝利だっただけに、期待は大きい。

 次回は中6日で15日の首位巨人との一戦になる。「次はもう初物じゃない。相手も研究してくる中で、どう対応できるか。しっかりと考えて投げたい」と頭を切り替えた。クレバーな左腕が、混セを勝ち抜く戦力に加わった。【為田聡史】

 ▼13年育成ドラフト1位の砂田がプロ初勝利。育成ドラフトで入団した投手の勝利は、5月3日二保(ソフトバンク)以来14人目。DeNAでは11年10月4日国吉、14年6月22日万谷に次いで3人目。砂田は19歳11カ月。DeNAに限らず育成ドラフトで入団した10代投手の白星は初で、国吉の20歳0カ月を抜く史上最年少勝利。

 ▼DeNAで10代の投手が白星を挙げたのは、06年6月29日巨人戦の山口(18歳11カ月)以来9年ぶり。左腕では88年10月2日広島戦の野村(19歳3カ月)以来チーム27年ぶり。