甲子園の主役は、清宮でも小笠原でもない! 阪神藤浪晋太郎投手(21)が今季3度目、しかもすべて甲子園での完封勝利で、リーグトップに並ぶ11勝目を挙げた。長期ロードも終わり26日ぶりの聖地甲子園。2位に迫ってきたヤクルト打線を3安打8奪三振に封じ、チームの連敗を2で止めた。ヤクルトから5戦4勝のキラー藤浪が3ゲーム差に突き放した。

 藤浪は最後だけ、快投のご褒美タイムを満喫した。「力試しというか、相手も真っすぐを狙っている状況で三振を取れるかと思って」。9点リードの9回2死、1ボール2ストライク。3番山田を154キロで遊ゴロに仕留めると照れ笑いだ。今季3度目の完封を1四球、被安打3で飾った。

 「今日負けると3連敗で嫌な感じになる。勝てて明日につながる」

 広島戦2連敗で長期ロードを終え、26日ぶりの甲子園戦。中7日で「バランスよく、上からたたけた」。最速157キロの直球が強い。変化球の制球力も抜群。3ボール到達は4度だけ。巨人戦3連勝後のツバメ打線に三塁ベースを踏ませず、自己最多とリーグ最多に並ぶ11勝目を挙げた。

 さすが、名将を仰天させた規格外の198センチだ。大阪桐蔭時代の練習中、西谷監督は目の前にコンクリートブロックを数個積み上げたことがある。「そこに乗って、藤浪と同じ目の高さになってみようと思って。竹馬に乗ってるみたいで、これはバント捕れへんわって思いました」。本人は「自分は不器用で人より時間がかかるタイプ」だという。人並み外れた長身は操作する難しさもあるが、最大の武器でもある。

 「自分は人より手足が長い。打者との距離を詰めやすいのは確かだと思う。高校時代から前でボールを離す意識はある。迫ってくる感じで投げたいので」

 両リーグトップの172奪三振は自己最多に並んだ。女房役の鶴岡は「人よりベースに近いところから投げられるから、ベース上の球速が増して三振を取れる」と説明する。ヤクルト山田は以前、藤浪の投球を「大谷より怖い。なんか怖い」と嘆いた。長い腕で可能な限り打者寄りにリリースポイントを作る。マネできない数センチの違いが奪三振マシンのベースにある。

 今季ヤクルト戦は5戦4勝。甲子園ではプロ通算16勝3敗となった。3年前に甲子園春夏連覇を達成した「聖地の申し子」のすごみは増すばかりだ。「プレッシャーは嫌いじゃない。しびれる場面で勝ってこそ。大事な試合でいい投球をしていきたい」。2位ヤクルトに再び3ゲーム差をつけた。V奪回の行方を占う9月、藤浪は重圧に真っ向勝負を仕掛ける。【佐井陽介】

 ▼阪神藤浪が今季3度目の完封勝利でセ・リーグ最多タイの11勝目をマークした。5月20日巨人戦(甲子園)で2安打毎回10奪三振でプロ初完封を達成し、7月24日DeNA戦(甲子園)で2度目のシャットアウト勝ちを収めていた。11勝とともに、この日の8三振を加えた172三振も昨季マークした数字に並んだ。

 ▼今季ヤクルト戦はこれで5試合に先発し4勝負けなしとなった。特に5月14日の今季初対戦(神宮)では1失点で今季初完投勝ち。そこまで他カード6試合で4敗を喫するなど苦しんでいたが、トンネルを抜け出し、その後の快投につなげていた。