あれよあれよの7失点、4回に投手館山に3ランを放り込まれる口あんぐりの展開で阪神が本拠地甲子園でヤクルトに連敗した。勝てばヤクルトの自力優勝を消し、今季のカード勝ち越しも決まっていた。首位固めに失敗どころか、2位ヤクルト、3位巨人に1ゲーム差と接近を許した。まるで夏休みの宿題を残した小学生の心境で、優勝をかけた9月戦線に臨む。

 大観衆ひしめく甲子園が静まり返った。信じられない光景に開いた口がふさがらない。乾いた打球音だけが響いた。白球は夜空を高々と舞う。左翼マートンは1歩も動けない。4回、大引に3点逆転打を浴び、なおも2死三塁。傷心の阪神岩崎優投手(24)は中村を敬遠して、投手の館山と向き合う。難なく抑え、まずは悪循環を断ち切るはずだった。なのに…。

 悪夢だった。初球だ。館山に速球を強振されると瞬く間にスタンドイン。誰もがあっけにとられた。痛恨の3ランを浴びて、致命傷を負う。この回、一挙7失点。和田豊監督(52)も口を真一文字に結んで、視線は虚空をさまよう。敗軍の将は「ちょっと7点は重すぎた…」と絞り出して、厳しい表情で振り返った。

 「3対1で踏ん張っておかないとな。(投手に被弾し)誤算どころか大誤算」

 1回に福留の先制打で幸先よくスタートし、岩崎も3回まで、ほぼ完璧に抑える立ち上がりだった。だがヤクルトが2巡目の攻撃に入った4回、雲行きは怪しくなる。無死一塁で山田の三塁ゴロを今成がはじく失策で走者がたまる。畠山にストレートの四球。無死満塁の大ピンチ。2死を奪うのが限界だった。大引に直球を狙い打たれ、捕球を試みる中堅伊藤隼の頭上を越えてフェンス最深部を直撃する。走者一掃の適時三塁打を浴びて、試合をひっくり返されてしまった。

 首位に立っているはずなのに、2位ヤクルトをのみ込むはずなのに、強力打線の猛攻に遭い、敗れ去った。2夜連続の惨敗。首位攻防戦を負け越し、ヤクルトと3位巨人が1ゲーム差に迫る。夏休み最後の聖地で完敗し「宿題」を積み残したままだ。

 最近2週間の星取表に注目する。18日からの巨人戦に3連敗。弱っているDeNAに3連勝して息を吹き返したかに見えたが、広島に2戦2敗。そしてヤクルトに負け越した。頂点をうかがう3チームに完敗し、強いチームに勝てない現実に直面している。

 和田監督 8月、尻すぼみになってしまった。しっかり仕切り直して、勝負の9月に入っていきたい。

 大敗濃厚の終盤は7点を奪う意地も見せた。9月は13年に月間6勝16敗2分けと大きく負け越すなど、近年、苦手にしている。負の流れを切れるか。和田阪神がペナントを占う正念場に立たされた。【酒井俊作】

 ▼阪神岩崎がヤクルト投手の館山に本塁打を許した。阪神が相手投手に被弾したのは、11年5月3日巨人戦(東京ドーム)で東野に能見が打たれて以来。その試合は、阪神が3回までに5点を奪い東野には3回裏にソロ本塁打された。試合は7-3で勝っている。

 ▼甲子園では、06年6月9日西武戦で松坂にダーウィンが2ランを浴びている。松坂の本塁打は8回表に飛び出し、これがプロ8年目の初アーチだった。

 ▼阪神のマジック点灯は、最短で9月6日となった。9月1日から6日までに(1)阪神6連勝(2)巨人3敗(3)ヤクルト2敗(4)広島4敗でマジック16がつく。前日までの最短3日から3日間も後退した。