昨年の大失速が繰り返されるのか。ソフトバンクに不穏な空気が漂った。投手陣が崩れ、まさかの大敗。リーグ連覇のかかった9月は黒星スタートとなった。「応援してくれたファンに、申し訳ない。こんな展開になって…」。工藤公康監督(52)は渋い表情で帰りのバスに向かった。

 誤算は寺原だった。先発では今季最短となる3回5失点KO。制球が甘く、栗山、中村に2被弾を許した。右膝手術から復活し、開幕7連勝を飾った。しかし、当時の勢いは消えた。「結果がすべて。僕のミスです」。疲労の蓄積を問われると、「そんなこと言ってられない」と首を横に振った。この3試合で14失点。不安を残す2敗目となった。指揮官は、陰りを見せる右腕をあえて叱咤(しった)激励した。「調子が悪くても、バッターに向かっていく気持ち、そこがないと、甘い所を打たれる。今までがんばってきたので、もう1回チャンスは与える」。

 2番手巽も森にプロ初の満塁弾を打たれ、粘れなかった。今季ワーストの13失点。チーム被本塁打は両リーグワーストの101本を数える。ヤフオクドームが狭くなった影響はあるが、1発に苦しむ展開が目立つ。

 ソフトバンクが参入した05年以後、9月以降は2度しか勝ち越していない。工藤監督は言った。「今が一番、力を合わせて、がんばっていかないと。(選手も)つらいと思う。でも苦しい時期を乗り越えないと優勝には届かない。去年のような思いをするのか、ここからにかかっている」。負のデータを打破するためにも、総力を結集するときが来た。【田口真一郎】