今季限りで引退する中日山本昌投手(50)のラスト登板は先発に決まった。今日7日の広島戦(マツダスタジアム)に先発し、打者1人に投球する予定。史上初の50歳登板を果たして、現役32年を締める。今季のセ・リーグ最終戦で、広島にとってはクライマックスシリーズ進出が懸かった大一番。左手人さし指が治らず満足に投げられない状態だが、阪神、広島に配慮し、最後の力を振り絞る。

 花道は514度目の先発マウンドに決まった。ナゴヤドームで全体練習に参加した山本昌は感慨深げに話した。

 「ナゴヤドーム19年間で最後の練習だね。ロッカー整理はまた今度にしよう」と寂しそうにグラウンドを後にした。翌日に迫ったラスト登板に備え、キャッチボールなど軽い練習に終始。やや緊張した表情も見せた。その数分後、7日の予告先発が発表された。

 引退マウンドは、日本中の野球ファンが注目するセ・リーグ最終戦になった。1日の広島戦が中止になり、7日に組み込まれた。広島が4日の阪神との直接対決に勝ったことで3、4位の順位決定も7日にずれ込んだ。「球界のレジェンド」の引退試合が、くしくもCSをかけた大一番にぶつかった。

 「CSが決まっていない中、阪神さん、広島さんには迷惑をかけてしまう。もちろん手加減は無用だし、僕も一生懸命投げる。打者1人と決まっているのでご容赦願いたい。最後なので、勘弁していただきたい。必死で投げますんで」。186センチの体を丸めるように平身低頭、両チームに“陳謝”した。

 世界最年長勝利をかけ、50歳まであと2日だった8月9日ヤクルト戦で今季初登板したが、2回途中で左人さし指を突き指。打者大引に対して3ボールとしたところでの緊急降板だった。通算219勝、現役32年の名球会左腕が「もっとも悔しい思い出」と嘆いたアクシデント。「わがままだけど、打者を完結させて終わりたい」と最後のこだわりと話した。

 人さし指は靱帯(じんたい)も痛めており、ブルペン投球すら再開できない。「マウンドに立てば打者を抑えることに集中する」。史上初の50歳登板。世界最年長勝利は絶望的になったが、果てしなく歩いてきた道の最後に、意地という名の痕跡を残す。【柏原誠】