巨人高橋由伸外野手兼任コーチ(40)が20日、球団から正式に次期監督の要請を受けた。都内ホテルで約50分間、久保球団社長と堤GMとの初交渉に臨んだ。選手として来季を見据えていただけに驚きつつも、巨人監督を託されることの重みも十分に理解。返事は保留したが、受諾するなら選手兼任ではなく、現役を引退して監督専任となる覚悟を明かした。交渉を重ねながら、熟考の末に最善の結論を下す。

 無数のフラッシュを浴びても、背筋はピンと張ったままだった。久保社長と堤GMとの会談内容を聞かれた高橋由は「来季の監督を、という要請です」と、はっきり言った。「引き受けるなら(選手)兼任はないと思います」。この日は返事こそ保留したが、受諾なら専任監督でとの考えを示した。1つのことに全身全霊を傾ける高橋由らしい、覚悟の表れだった。

 「巨人軍監督」の重みは十分に分かっている。81年の球団の歴史で、わずか16代しか務めていない重責。高橋由は長嶋、堀内、原という指揮官の姿を間近で見てきた。「ジャイアンツのOBでも偉大な先輩たちがやってきているもの。まだまだ偉大すぎて、そこに僕がっていうのが…とは思っています」と恐縮し、素直な心境を明かした。

 現役選手にもかかわらず、17代目の監督候補にと指名された意義は理解する。「球団の方にもいろんな覚悟であったり、いろんな思いがあってのことなんだろうなというのは理解できています。決して後ろ向きではなく、大変光栄な話」と熱意は心に響いた。今季は代打での打率が3割9分5厘と勝負強さを印象づけていた。「神宮(17日のヤクルト戦)で負けてから、来季に向けて選手として気持ちを切り替えていたところだったので(監督要請に)驚いている。まだまだできるのではないかという思いもある」と選手として高みを目指したい純粋な欲求はある。そんなバットマンとして生きてきた自分のこだわりよりも、要請されたことの重みを真正面から受け止めた。

 初交渉では条件面などの具体的な話はなかった。今後は日程を調整しながら交渉を続ける。交渉前、原前監督と長嶋終身名誉監督と電話で話をした。原前監督には「力になれること、相談に乗れることは全力でする」とバックアップを約束してもらった。高橋由は「1日でも早く答えを出したい。僕が覚悟を決めるかどうかじゃないですか」と、力を込めた。秋季キャンプ(宮崎)開始予定の11月7日までに、大きな決断を下す。【浜本卓也】