ソフトバンク武田翔太(22)が「シリーズ男」を襲名する完投勝利を飾った。第1戦に先発し、完封まであと1人という場面で畠山に2ランを浴びたが、続く雄平を打ち取った。日本シリーズでは昨年の第2戦(阪神戦)に続く白星。2安打された1回を無失点に切り抜けると、2回から8回1死までは無安打の快投だった。22歳6カ月で、球団では史上最年少の日本シリーズ開幕勝利投手となった。

 あと1人で完封を逃した武田はマウンド上で笑っていた。9回2死から畠山に2ラン。「ミス…。大事なところで甘くなる。オチがあった」。完封なら球団では99年の工藤監督以来だったが、シリーズ白星の輝きは変わらない。

 8回まで99球で3安打無失点。9回は守護神サファテへの継投も考えていた工藤監督に「投げたい」と直訴した。工藤監督は「絶対点を取られるなよと言ったことが逆にプレッシャーになったのかもしれません」と苦笑い。最後の打者雄平を二ゴロに打ち取り、ベンチで武田は「スミマセン」と悔しがった。

 「今年のベストに近い」という投球で、第1戦を完投勝利で飾った。初回に2安打されたが、今年研究を重ねた「洞察力」で切り抜けた。「カーブが頭にあるんだろうな」。2回にはバレンティンにあえて内角直球を投げ、ポイントの近さを肌で感じた。3回1死からこの日唯一の四球を与えたが、川端を併殺打に仕留め、8回1死まで14人連続でアウトを積み重ねた。

 CSファイナルステージでも第1戦を任されたが、初回から飛ばして5回途中で降板した。全力で150キロを投げるより、145キロ前後でキレのある直球の方がいいとあらためて感じた。「今日は6割くらい。力を抜く。気を抜くのではなくバランスよく。指にもよくひっかかってくれた」とまた成長した。

 球団16度目の出場で、チーム最年少の日本シリーズ開幕勝利投手。59年杉浦忠の24歳2カ月を塗り替えた。高卒4年目右腕は「あえて内角を、今日は突きました。細かいデータを取り入れられたと思います。(畠山の本塁打も)あそこがツボだと分かったと思う」とデータ収集にも貢献した。昨年のシリーズでは第2戦で流れを変えた。今年はチームに勇気と自信をもたらす、風格すらある第1戦勝利だ。【石橋隆雄】

 ▼22歳6カ月の武田が完投勝利。第1戦での勝利投手としては5番目、完投では3番目の年少記録となった。満22歳以下のシーズンで完投した投手は、07年第1戦のダルビッシュ(日本ハム=21歳2カ月)以来11人目。ソフトバンクでは53年第6戦20歳11カ月の大神、65年第4戦21歳6カ月の林、03年第7戦22歳8カ月の和田に次いで4人目で、年少3位。

 ▼武田の奪三振は4回畠山の1個だけ。完投の最少奪三振は78年第4戦今井(阪急)の0があるが、今井は敗戦投手。完投勝利では72年第3戦足立(阪急)以来43年ぶり5人、6度目の最少三振タイ記録。