フルスイングだけじゃない。小技もきっちりたたき込む。阪神の高知・安芸キャンプで8日、この時期では異例のスクイズ練習が実施された。降雨のため安芸ドームで行われた練習メニューに、野手全員参加のセーフティースクイズ練習が組み込まれた。今季は143試合でスクイズ成功はゼロ。苦手克服へ、早くも動きだした。

 コツン、コツン-。安芸ドーム内に小気味よく打球音が響いた。ケース打撃の最後に設定されていたのは、この時期としては珍しいスクイズの練習だった。高代延博ヘッドコーチ(61)が「1死一、三塁!」などと、場面を設定。野手が打席に入り、マシンから放たれたボールを一塁方向に転がした。

 三塁ベース付近でにらみを利かせた高代コーチは、練習の意図をこう説明した。

 「俺自身がサインを出していて一発で決められないプレーが多すぎる。サインプレーは一発で決めないといけない。これが(投手が)人間になったらどうか。プラス、変化球も入ってくるんだから」

 虎党には苦い光景が目に焼き付いている。9月21日のヤクルト戦(甲子園)だ。同点の6回1死満塁で8番大和がスクイズを失敗。指揮官の勝負手が不発に終わり、チームは終盤に勝ち越しを許した。この試合に敗れたことで、V戦線から転げ落ちた。

 「野球をするのは監督。だから来年(小技が)増えるかどうかというのは言えない。ただ、準備はしないといけない」

 高代ヘッドは厳しい表情でそう話した。豪快な柵越え連発で注目されている安芸キャンプだが、基本に忠実な細かい野球は絶対に必要。今季、1度も決めることが出来なかったスクイズなら、なおさらだ。

 練習の最後に打席に立ったのは、大和だった。グラウンドの黒土よりもボールがはずむ人工芝の室内で、確実にボールを転がしてみせた。「大事な練習だと思います。1球で決められるように頑張ります」。来季こそは、意表を突いて得点する痛快なシーンが見たい。【桝井聡】

 ◆今季の主なスクイズ失敗 4月3日巨人戦(東京ドーム)で2点リードの8回1死三塁。大和がマシソンの初球、高め直球を空振り。三走が憤死した。5月23日DeNA戦(横浜)では同点の延長10回1死三塁で俊介がファウル。最後は空振り三振に倒れた。福留の2適時打で勝ち越しも、和田監督は「その前のスクイズで決めなあかんわ」。9月21日ヤクルト戦の大和はスライダーをファウル。結局、三ゴロに倒れた。