阪神金本知憲監督(47)が描く来季構想の中心に、2年契約が終了した呉昇桓投手(33)がいた。かつて、守護神を務めた藤川が復帰したが「スンファンより圧倒的なボールを投げれば(藤川の抑えも)分からないけど」と語るにとどまっている。指揮官の中で、あくまで守護神は2年連続セーブ王の鉄腕だった。

 「(ストッパーは)スンファンがいるから。スンファンありきで計算してるから。(来季残留が)なかったら、困ってしまうわ」

 選手によって複数ポジションを試すなど、あらゆる可能性を考慮し、現状を打破していこうとする新指揮官だが、呉昇桓のストッパーに関しては不動のポジションと計算していた。

 ただ、金本監督が残留を祈りながら待っているような性格ではないことも確かだ。すでに関係者を通じて残留ラブコールを送っていることを明かしたのだ。

 「内々では…残ってもらうよう言ってほしいとは伝えた。彼も熱きハートを持った男らしいからね。マウンド上では出していないけどそういう内に秘めたものがあると聞くから」

 呉昇桓は日本時間15日から渡米し、現在はメジャー複数球団との交渉を行っている状況という。もちろん、球団側も期限を設けずに、最優先事項として全力で慰留にあたっているが、状況は不透明。そこで少しでも呉昇桓のハートが動けばと、指揮官自らが“残留要請”を行ったのだろう。

 また、関係者に呉昇桓が来日する可能性を探るなど直接会談への姿勢すら、うかがわせている。1492試合連続フルイニング出場の世界記録を樹立した鉄人と、イニングまたぎ、連投も辞さず、日韓通算357セーブを誇る鉄腕には相通じる部分があるのかもしれない。いつになく、熱のこもったメッセージだった。【鈴木忠平】

<呉昇桓を巡る動き>

 ◆10月23日 南社長が、呉昇桓に残留要請していることを明かした。呉昇桓は、韓国に帰国する関西空港で去就について発言。日本他球団でのプレーは明確に否定も、メジャー挑戦には「いろんな方向で考えている」と語った。

 ◆11月10日 複数の韓国メディアが「呉昇桓が近日中に渡米し、複数の球団と交渉開始」と報道。

 ◆同11日 金本監督が「拡大クローザー」構想を披露。「若手(歳内や松田ら)を使いながら呉昇桓も使うのが理想」とした。また、米ヤフースポーツでは今オフFA選手をランク付しており、韓国インターネットメディアOSENで報じられ、呉昇桓は救援投手では4番目の位置づけ。「韓国のマリアーノ・リベラ」と紹介された。

 ◆同12日 「インディアンスが呉昇桓に興味」と、現地メディアが報道。

 ◆同14日 球団最多220セーブを誇る藤川球児の復帰を球団が発表。金本監督はあらかじめポジションを用意することなく、チームの戦力状況や藤川の状態を見て最終的に判断する方向。

 ◆同15日 韓国・聯合ニュースは呉昇桓が米大リーグとの本格的な交渉のため米国へ出国したと伝えた。聯合ニュースによれば約10日間滞在予定。米サイトによればヤンキースが呉昇桓に興味を示しているという。また、阪神が返答期限を設けず慰留交渉を続ける方針であることも判明した。