復活を遂げた15年-。楽天釜田佳直投手(22)がコボスタ宮城の室内練習場で来季に向けて練習を行っている。14年3月に右肘のトミー・ジョン手術をした後、1年間のリハビリを行い、8月29日に716日ぶりの勝利を挙げた。ルーキーイヤーの12年には7勝を挙げ、「星野チルドレン」と呼ばれた逸材。故障という苦難を乗り越えた今季を振り返り、来季への意気込みを語った。

 透き通るように冷たい空気が充満するコボスタ宮城の室内練習場で、釜田は汗を流していた。わずかに差し込む暖かな光の下で1球、1球、確かめるようにキャッチボールを行う。カメラのシャッター音を聞くと、「肘上がってますか?」と笑顔で逆取材。投げられる喜びをかみしめているようだった。

 復活の1年だった。14年3月6日、右肘のトミー・ジョン手術を受けた。術後1カ月後、ギプスを外すと右肘はわずか15度しか動かなかった。つらいリハビリを支えたのは1つの言葉だった。「1歩進まず、半歩遅れず」。ロッテ小谷2軍投手コーチの著書にあったフレーズだった。「リハビリはやり過ぎてもダメ。1つずつ段階を上るしかない」。同世代の活躍を見ても、自分は走り込みを繰り返すしかない。焦る自分を落ち着かせる安定剤となった。

 手術からちょうど1年後の3月6日。春の暖かい日差しを受けながら、教育リーグ日本ハム戦で実戦復帰。1軍から声がかかったのは暑い夏だった。8月29日コボスタ宮城で1軍マウンドに立った。西武を相手に5回4失点で、13年9月12日以来の白星を挙げた。「ホッとしましたね。結果を出さなければ、終わってしまうという怖さもあった」。

 秋、不安が消えた。9月30日、パ王者のソフトバンクを相手に6回2/3を投げ8安打2失点。最速150キロの直球と消えるように落ちるフォークで9奪三振の快投だった。勝ち負けはつかなかったが、「あの投球ができて、来季もやっていけるという自信ができた」と手応えをつかんだ。倉敷秋季キャンプでも「肘の状態が落ち着いた。投げた後の張りがなくなって、球数を度外視して投げられるようになった」とブルペンで投じた球数は1日最大200球。110球の制限を受けていた春先と違い、心おきなく腕が振れた。

 迎えた今冬、胸には希望が宿る。自主トレはヤンキース田中らと行う予定だ。「1年目は一緒にやらせていただいた。でも2年目、3年目はリハビリでできなかった。会うのは将大さんがニューヨークに行って以来なので、いろいろと吸収したい。勉強させてもらいます」と目を輝かせた。

 季節とともに、復調を遂げた。1年を振り返ると「今年は1軍で投げることが目標だった。プラスアルファで勝つとか、いい投球ができればというのがあった。だから1勝できたというのは大きい。来季は復活勝利を目指すというところから始まらない。0からではない目標を立てられる」と力がこもった。復活の1年は終わった。新たに立つスタートラインは、プロとして勝負ができる喜びにあふれている。【島根純】