日本ハム大谷翔平投手(21)の“全米デビュー”は衝撃的だった。韓国ロッテ戦で今季初登板。バックネット裏にメジャー全30球団約80人の関係者が詰めかける異様な雰囲気の中、2月中旬にもかかわらず最速157キロ(中継テレビ局のスピードガン)の剛速球で2回1安打無失点。4者連続奪三振と、圧巻の内容で強烈なインパクトを残した。

 練習試合とは思えぬほど、ネット裏の視線は熱気を帯びていた。大谷の米国初登板に集まったメジャースカウト陣は、通常のオープン戦、公式戦の約3倍以上となる全30球団、総勢約80人。大谷が投球モーションに入るたび20台以上のスピードガンが並ぶ光景は、さながら大谷の「お披露目イベント」のようだった。

 この日の登板は、日本ハムから事前に米球団側に告知されたわけではない。だが、各球団の編成担当は独自の情報網を駆使し、登板日程を把握。結果的に全球団が集結するほど、大谷への注目度は格別だった。

 特に、同じアリゾナ州内にキャンプ施設を持つ球団は、編成トップクラスが続々と詰め掛けた。カブスは、エプスタイン社長、ホイヤーGMのほか、複数の担当者が視察。同社長、同GMとも「今の段階ではコメントできない」と、直接的な印象を語ろうとはしなかったものの、大谷が三振を取るたびにうなずき合うなど、インパクトの強さは隠しようがなかった。

 過去数十年、日本市場を見てきたジャイアンツの老スカウト、ジョン・コックス氏は昨季、大谷の投球を3試合見たことを踏まえた上で「彼は彼で、我々が見た通りだ。体の状態だけを見に来たが、いい感じだし、すでに97マイル(約156キロ)くらい出ていた。(二刀流は)神が授けた能力。彼の野球人生が終わるまで、それを生かしてほしい」。

 このほか、レッズのジョケッティ社長、ブルワーズのメルビン社長をはじめ、レンジャーズのダニエルズ社長兼GM、パドレスのプレラーGMら、決定権を持つフロント首脳が、大谷の投球を熱心に見守った。

 大谷の海外FA権取得は早くても21年オフ。メジャー各球団は、その前にポスティングシステムによる獲得を狙う。投手だけでなく、打者としても進化すれば、「狂騒曲」は、さらにヒートアップするだろう。