ニッカンスポーツ・コムでは、新聞紙面で好評の里崎智也氏(日刊スポーツ評論家)の「ウェブ特別評論」を今季から掲載する。

 今回はルール改正となった本塁上のクロスプレーについて話を聞いた。

 今季から本塁でのクロスプレーで捕手のブロックが禁止となる。

 阪神ではホーム上での捕手の立ち位置を審判に入念に確認するなど対策メニューが組まれていた。

 個人的には今回のルール変更は、ホームベース上のタッチが二塁、三塁と同じ普通のベースタッチになったと考えている。

 宮崎、沖縄でキャンプ視察して思うに、現行のルールのままではホームベースにちょっと足がかかっただけでも走塁妨害になる恐れもあるので、本塁上は少し複雑になる可能性もある。今後、オープン戦を通して審判も選手も確認が必要だろう。

 ただ、自分と重ね合わせて、捕手目線で見てしまうが、新ルールは捕手寿命で考えればプラスと捉えたい。

 現役時代に本塁のクロスプレーで2度、左脇腹を骨折した。捕手がけがするケースは以下の2パターンだ。

(1)走者の体当たりに負けまいと踏ん張って、走者と衝突する場合。

(2)不可抗力。それた送球を捕球し、振り向きざまに左脇腹に走者が突っ込んできたケース。

 では2つのけがを防ぐにはどうするか。(2)の不可抗力は残念ながら制御不能。ただ(1)については、けがを減らすことができる。

 吹っ飛ばされて当たり前-。ボールだけしっかり持って、勢いある走者に無理に体当たりを挑まず、タッチに集中して、飛ばされる心の準備さえあれば、飛ばされてもけがは減る(もちろん受け身の習得は必須)。

 「ブロック禁止」についてルールが実戦の運用で落ち着くまでには、さまざまな問題が起こるだろう。

 しかし、ルール改正の根源は、セーフのタイミングを捕手のブロックで無理やりアウトにしようとするところにあったのではないか。

 走路がないから、走者はホームベースをこじ開けようと捕手に体当たりする。捕手も勢いのついた走者を受け止めようと踏ん張るからケガをするといった悪循環だった。

 かつては「命張ってでもホームを守れ」「1点やらなかったら本塁打1本分得する」。そんな声を耳にしたこともある。もちろん、気概も大事だが、なぜ、そういうことが、問題になるのか、本質をしっかり把握できれば解決の突破口になる。

(日刊スポーツ評論家)

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。