超速の進化が止まらない。楽天ドラフト1位のオコエ瑠偉外野手(18=関東第一)が20日、阪神との練習試合で、藤浪晋太郎投手(21)から先制の適時打を放った。「8番・中堅」で先発出場。第1打席に、外角低めの151キロ直球を中前へはじき返した。16、18日の練習試合で速球に苦しんだ姿がうそのような一打。試合後、梨田昌孝監督(62)は22日以降も宮崎1軍遠征に同行させると明言した。

 また1つ、オコエが壁をぶち破った。0-0の2回1死一、三塁。カウント1-0から阪神藤浪の外角低め直球に体が反応した。1秒17(本紙計測)のクイックから放たれた151キロにも差し込まれない。バットの芯で捉えたライナー性のゴロは藤浪の足元を破り、中前へ抜けた。先制の適時打だ。「藤浪さんの球は速くてキレもすごかったので、振り遅れないように意識しました。タイミングが合ったのはたまたまですが、150キロ超えを打てたのは自信になりました」。謙虚な言葉の中にも、確かな手応えがにじんだ。

 わずか4日間で「進化」を遂げた。16日の阪神戦では先発岩貞、2番手秋山の前に2打席連続三振。1秒20を切るプロのクイックに「本当に速い。タイミングが取れない」と一時は自信さえも失いかけた。課題と向き合い、乗り越えようと模索する中で「変化」を取り入れた。これまでトップと同時に右の股関節に体重を移していたスイングを、最初から右太もも内側に体重を置き、予備動作を省くよう修正。クイックと速球にも振り遅れなかった。「前回の反省を生かして、左足を上げるだけにしたんです」。前日19日には、5メートル距離を縮めたマシン打撃で150キロ超えのタイミングを計った。分析力と対応力が生んだ一打だった。

 対外試合4試合目で直球の安打はこれが初。その成長ぶりに、梨田監督は「体から距離の取れる低めで、打球もいい場所に飛んでくれた。まだ高めの150キロとかは打てないが、今まで変化球ばかり打っていたのでね」と一定の評価を与えた。厳しめの言葉は期待の裏返しでもある。宮崎行きを問われ「連れて行きます。1軍でいいでしょう」と即答した。実戦経験を積ませながら、大きく育てたいと思わせる魅力がある。

 18歳のオコエは休日にも外出の機会はなく、食事もホテルの夕食が基本。それでも「どんどん新しいことを学べているのが楽しいです。野球をやっている以上は気合マックスで頑張る」と充実感をにじませた。まだ進化は止まらない。【松本岳志】

 ◆オコエの打撃改造 木製バットに苦しんだ1日の打撃練習翌日から、池山打撃コーチと二人三脚の歩みを続けている。バットが遠回りするドアスイングを修正するために、毎日のティーバッティングや特打などで左脇を締めたフォームを徹底。同時に、頭付近にあったトップの位置も胸付近まで下げた。最短距離でバットを出せるようになり、プロの投球への対応力が飛躍的に向上した。