阪神陽川尚将内野手(24)が決勝2ランで生き残りを猛アピールだ。27日の韓国・サムスンとの練習試合。2回にチーム最多を独走する3発目を中越えに運んだ。キャンプ実戦は4試合で4番を張ったが、他の打席の内容が悪く、打率は1割8分2厘と低迷。この日は8番に降格し、金本監督が「崖っぷち!」とヤジを飛ばす中で最高の結果で応えた。

 ベンチの金本監督がヤジったのは何と自軍の陽川だった。「崖っぷち、崖っぷち!」。プロの世界でも味方監督にヤジられる場面はめったにない。だが若虎は愛情たっぷりの激励を受け止め、結果で応えた。2回。09、13年のWBC韓国代表左腕、張■三(チャン・ウォンサム)のスライダーに詰まりながらも中越えに決勝2ラン。チーム最多のキャンプ3発目で唯一の得点をたたき出した。

 陽川 ずっと結果が出ていなかったので。とにかく結果がほしかったです!

 久々の笑みがはじけた。チームの16年紅白戦1号など2本塁打したが他の打席の内容が悪く、打率は1割8分2厘と低迷。4試合4番を張った打順もこの日は8番まで下げられた。そこで虎の将が送ったヤジが「崖っぷち!」。指揮官もうれしそうにうなずいた。

 金本監督 陽川も江越も崖っぷちからね。昔「崖っぷちアイドル」って言葉が流行ったよね。ベンチから「崖っぷち、崖っぷち」と言っとったけど、崖っぷちから1歩前に前進だね。

 00年代の初め、芸能界に残るためにどんな仕事もこなしたアイドルを総称した言葉が流行した。金本監督が大砲候補と期待をかける陽川と江越も、魅力十分のアイドル。でも崖っぷち…という意味なのだろう。だが、そんなジョークが飛び出すのも内容が伴った結果だったから。「左肩が開かず我慢したからね。だから詰まっても押し込めた」。価値ある1発と評価した。

 それでも金本監督はすぐ不満顔になった。5回は甘い球を仕留め切れずに変化球で中飛。好結果が続かないことに首をかしげ、試合後には特打を課して打撃教室も開いた。「始動が遅い。だからベース板に近いところでのファウルになったり、空振りさせられる。試合ではタイミングが一番大事なんだから」。1発は出たが、まだ崖っぷちから1歩前進しただけ。それは陽川も分かっていた。「ホッとなんてしていません。結果を考えてもっとアピールしていきたい」。今日28日の紅白戦がキャンプ最終実戦。崖っぷちアイドル脱出の一撃で、監督を心から喜ばせたい。【松井清員】

※■はサンズイに亘