もう1人、頼れるベテランが復活した。「日本生命セ・パ交流戦」で、巨人内海哲也投手(34)が、6回無失点の好投を見せ今季初勝利を挙げた。前日5月31日の復帰戦で決勝2ランを放った阿部慎之助捕手(37)に続くように、チーム52試合目、自身3試合目で待望の白星を手にした。チームは3連勝を飾り、貯金1で2位に浮上。6月攻勢へ、役者がそろってきた。

 初勝利の味は、想像とは違った。9回、ベンチでゲームセットを迎えた内海は、力いっぱいのガッツポーズと笑顔で喜びを表現した。「気持ちのいいものですね」。無数のフラッシュ、テレビカメラを前にヒーローインタビューでも笑顔があふれた。「絶対に、泣く」。以前、山口に初勝利の瞬間を予言したが、内海に似合うのは笑顔だった。

 はい上がった。今季3戦目での初勝利は、これまでの野球人生と重なった。小学2年で野球を始めたが、候補の3チームから選んだのは最弱チーム。中学でも3番手投手だった。「勝つって、難しいな。でも、負けへんよ」。努力と鍛錬で巨人のエースに上りつめた男は、先発ローテ剥奪危機から白星を挙げた。

 自らを「一新」し、覚悟を決めたシーズンだった。昨年の監督就任会見、キーマンの1人に指名された。「うれしかった」。菅野が開幕投手を務めた2年前、自身の立場を「陰から支える」に変えたはずが、湧き上がる感情が思いを変えた。「開幕投手を目指します」。昨年末、高橋監督にそう伝えた。開幕投手は逃したが、先発陣の柱を担う思いは変わらなかった。

 空から見守る、伯父にも白星をささげた。1月、沖縄自主トレ中に父親のような存在だった伯父が死去した。連絡を受けたのは、休養日前日で練習後に京都へ急行した。「見ててや。頑張るから」。安らかに眠る伯父の顔を見ながら、そう誓った男は、大事にウイニングボールを握った。

 再三、走者を背負いながら、6回無失点で要所を締めた。「自分のスタイル。1球1球、粘り強く投げた」。チームは3連勝で2位に浮上。高橋監督は「苦しんできた2人が1軍で結果を残すと違いますね」と投打の軸で期待する2人の連日の活躍を評価した。背中を追い続けた阿部に連なるように、内海が復活ののろしを上げた。【久保賢吾】

 ▼巨人が初回の1点を守って勝利。巨人のスミ1勝利は15年4月22日広島戦以来だが、前回はホーム(宇都宮)で1回裏の得点。1回表の1点で勝った敵地のスミ1勝利は00年7月30日、ナゴヤドームの中日戦以来、16年ぶりだ。今季初勝利の内海は交流戦通算21勝目となり、交流戦勝利ランキングの4位タイに進出。26勝で1位の杉内(巨人)はソフトバンク時代に18勝、成瀬(ヤクルト)はロッテ時代に20勝しており、セ・リーグで交流戦21勝は石川(ヤクルト)に並び最多となった。