27個目のアウトを奪っても、DeNA久保康はニコリともしなかった。淡々とこなしてきた仕事が終わった瞬間、もう別のことを考えていた。「終わった瞬間、次の試合の準備は始まってるんで」。喜ぶ間もなく、7回の福留などフルカウントにした場面があったのを反省していた。「ストライクゾーンで勝負せざるを得なかったんで」。次の試合への課題にした。

 サイボーグのように完璧な仕事ぶりだった。5回まではパーフェクト。阪神打線を鋭い観察眼で見極め、誘うように低めの緩い球を振らせた。「若い子がブンブン振って来ていたので、様子を見ながらの投球でした」。ものの見事にはまった。6回、先頭の北條に内野安打を許しても、動揺はなし。「(完全試合を)5回で意識する人間いますか?」と、まるでひとごとだった。

 12個の内野ゴロが低めにボールを集めた証し。ゴロを打たせる極意について「ハマスタでは打球が上がるとホームラン。ハマスタで投げていれば、自然と覚えられますよ」。高さを間違えない投球を覚えたという。それが7球団目の完封につながった。連敗を止め、今日1日からの首位広島戦へ弾みをつけた。ラミレス監督からも「素晴らしい。それ以外の言葉は見つからない」と絶賛された。【竹内智信】

 ▼久保康が古巣阪神に完封勝利。久保の完封は通算8度目だが、阪神戦は初めて。これで完封した相手は7球団目。現役では松坂(ソフトバンク)杉内、内海(巨人)岸(西武)と並んで最多となった。多くのチームを完封した例には、中尾碩志(巨人)の15球団がある。