もはや無視できない、重度の「無死満塁」病だ。中谷、北條、岡崎の3連打であざやかに1点を先制した2回。なおも無死満塁として1番西岡…。何点入るかワクワクした攻撃は、まさかの無得点に終わった。8日の広島戦でも無死満塁からの無得点が響き反撃終了。安打や犠牲フライだけでなく、暴投、ボーク、押し出し四球を期待するのはムシが良すぎるのか…。

 本来なら舌なめずりするはずのビッグチャンスが大ピンチに映る。金本阪神が連夜の拙攻で、苦戦するルーキー岡田に屈辱的な敗戦を喫した。1点を先制した2回、なおも無死満塁の絶好機で追加点を挙げられない。金本監督は勝負のポイントかと問われ「誰が見てもそうでしょう。誰がどう見ても」と渋い表情だった。

 岡田は浮足立っていた。速球は上ずり、変化球も制球できない。2回、エンドランをキッカケに1点を奪い、なおも無死満塁で1番西岡に回る。誰もが追加点を確信する局面だろう。だが、西岡は外寄り直球に押され、ゴロは三塁正面へ。ルナが本塁送球し、得点は阻まれる。鳥谷は高めのボール球に手を出して遊飛…。江越に至っては、1ボール後、3球連続の直球をすべて空振りし、あえなく三振…。意気込みは空回りし、わずか1点止まり。首位広島に6連敗した窮状を物語っていた。

 前夜も4回、3点差に迫り、なおも無死満塁で加点できなかった。トラウマになっているかのように連日チャンスをつぶした。指揮官は「あそこはあと1本というより、足の速い1、2番なんだから。ゲッツー崩れでも1点、2点入る。剛はそれを狙いに行って三塁ゴロになったように見えたけどね」と悔いる。畳み掛けられず、勢いに乗れないのは当然だ。効果的に得点を重ねた広島打線と対照的に歯がゆさだけが残る。

 岡田の球威に押されたのも敗因だった。3回は1死三塁で、制球難のルーキーをリードする広島石原もミットを真ん中に構えていた。それでも中谷は2ボールから追い込まれ、148キロに振り遅れの空振り三振。北條も簡単に2ストライクにされ、145キロに空を切る。完全に力負けだった。失望し、無力感が募る。満員の甲子園は虎党のため息に包まれた。

 苦境を脱するべく、指揮官自身も動いた。プレーボールの約5時間前、室内練習場で若手と向き合い、額には大粒の汗がにじむ。アンダーシャツ姿になって打撃指導。最善を尽くしても報われない。3位の中日、DeNAにも3・5ゲーム差にじわりと広がった。打開できなければ、クライマックスシリーズ進出に黄信号がともる。【酒井俊作】

 ▼阪神は2回、1点を取った後の無死満塁で、西岡三塁ゴロ、鳥谷遊飛、江越三振で追加点はならず。前日8日の広島戦4回にも2点を挙げた後に無死満塁としたが、北條三振、原口遊ゴロ併殺。2試合連続で「無死満塁から無得点」のイニングを作った。阪神は2日中日戦3回も無死満塁としながら、西岡投ゴロ併殺と伊藤隼右飛で0点で、リーグ戦再開後、早くも3度目となる。阪神の打者は今季、計17度の無死満塁の状況で11打数2安打の打率1割8分2厘にとどまり、安打数を上回る3併殺打を記録。5月11日7回の鳥谷投ゴロ併殺以降、7人の打者が凡退を続けている。