後半戦も「神ってる」! 広島新井貴浩内野手(39)が、同点の9回裏、右翼スタンドへサヨナラ11号を放った。自身8年ぶり3度目のサヨナラ弾で、後半戦の白星スタートを決めた。貯金は今季最多タイの20となり、最短なら23日に優勝マジックが点灯する。25年ぶりのリーグ優勝へ突き進む。

 スタンドインを確信したように、新井は振り抜いたバットを放り投げた。9回。夜空に打ち上げられた白球は大歓声に吸い込まれるように、満員の右翼席へ。三塁を回ったベテランは本塁を前に、今度はヘルメットを放り投げた。両手で来い来いとジェスチャーする先には、笑顔でペットボトルを持つチームメートが待っていた。

 新井 ここぞとばかりに日ごろのお返しというかね。うれしいです。喜んでくれて良かったです。

 ウオーターシャワーを浴びた。体をバチバチたたかれた。2000安打達成時に「かわいい子たち」と表現したチームメートの手荒い祝福が気持ち良かった。

 「神ってる」勢いは後半戦も生きていた。中盤までは2点を追う展開。だが、7回に相手のミスに乗じて追いつくと、最後はベテランの一振り。新井のサヨナラ弾は8年ぶり3本目だが、地元広島では初。今月6本目の本塁打で、通算300号まで残り2本とした。

 「神ってる」広島の中で、中心的な存在だ。自ら追い込む姿に、副選手会長の会沢は「実績のある新井さんがあそこまでやっている。僕らがやらないわけにはいかない」と感服。菊池は犠牲を惜しまぬ打撃に「新井さんが実践してくれている。その姿を僕らは見ていますから」とチームメートの思いを代弁する。後輩から尊敬される立場であり、中堅の菊池や丸からいじられる親しみやすさも併せ持つ。チームをまとめ上げ、さらに結果を出す主砲に、指揮官も最敬礼だ。

 緒方監督 今日は新井さんでしょう。新井様になるのかな。大したもの。一振りで相手の失投とはいえ、それを逃さず本塁打を打つのだからすごいね。すごい。すごいのひと言。

 チームの貯金は再び今季最多の20。「今日もみんな諦めていなかった。今日はたまたま最後に僕が決めただけ。明日も精いっぱいプレーして、いい試合をお見せしたい」(新井)。頂点にたどり着くまで、歩みは止めない。コイには「新井様」がいる。【前原淳】

 ▼新井の本塁打で広島が今季7度目のサヨナラ勝ち。後半戦の初戦でサヨナラ勝ちは58、74、81、95年に次いで21年ぶり5度目だがすべて中日が相手だ。新井のサヨナラ本塁打は阪神時代の08年4月30日ヤクルト戦以来3本目で、広島では02年5月29日中日戦以来2本目。新井は現在39歳5カ月で、広島では86年9月11日山本浩の39歳10カ月に次いでチーム2番目の年長サヨナラ本塁打となった。今季、新井の肩書付きの殊勲安打は19本目。打点は山田(ヤクルト)に次いで2位だが、殊勲安打は山田の17本を抑えリーグで最も多い。