ヤられっぱなしでは終われない。悔しい敗戦の中、若虎がキラリと光った。阪神北條史也内野手(22)が3回に意地の右前適時打だ。1打席目も左前打で、8戦連続の安打をマークするなど好調をキープした。遊撃手として先発出場した試合で打点を挙げた際の連勝は止まってしまったが、過去を振り返りはしない。今日28日こそ、虎党に勝利をおくってみせる。

 北條のヒットパレードが止まらない。13試合連続で遊撃スタメン出場の若武者が意地のマルチ安打をマークした。1回の1打席目に8試合連続ヒットとなる左前打を放つと、続く3回の2打席目だった。1死一、二塁。カウント1-1からヤクルト石川の3球目、外角シンカーに食らいつく。打球が右翼手の前にはずむタイムリーになった。

 「コースはそこまで考えず高めのボールを振っていこうと。(実際のコースは)高くなかったけど、投げた時に(高く感じた)。体を開かずに打ち返すことができました」

 22歳の目はぎらついている。昨季までのプロ3年間で1軍の打席に立ったのは、たった1度だけ。そんな男が、まさに「超変革」を遂げた。これで複数安打は今季17度目だ。これまで下位打線が多かった打順も、8月中旬からは1、2番に固定され、その勢いはさらにヒートアップ。初回に出塁した際には盗塁を成功させるなど、足でも魅せた。現時点で攻撃の起爆剤になっていることは間違いない。

 実は遊撃手で先発した試合で打点を挙げれば、8戦連続でチームが勝利していたが、これでストップ。貢献度の高さを示す数字ではあったが、毎試合のようにユニホームを泥だらけにする背番号2にとってはそんな話題は関係ない。とにかく打ちたい、とにかく勝ちたい-。北條は力強く言った。

 「次の日も試合はありますから。また切り替えてやっていきます」

 うしろを振り返っている余裕など今の北條にない。視線の先にあるのは目の前の試合。それだけだ。がむしゃらに泥臭く。「神話」は止まってしまったが、前だけを見つめてシーズンを完走する。【桝井聡】