またまた接戦を制し優勝マジックを14と減らした一戦で、広島鈴木誠也外野手(22)は2本塁打を放った。中日18回戦(ナゴヤドーム)で6回に追撃の20号ソロ。延長10回には満塁弾の新井に続き、21号ソロを突き刺した。高卒4年目までで20号到達は、球団では衣笠祥雄、前田智徳に続き3人目。大物の予感をさせる鈴木の活躍もあり、チームは4連勝と優勝への歩みが止まらない。

 怒りをぶつけた。1点差に迫られた直後の6回。鈴木はカウント3-1から中日小笠原の5球目、141キロ内角真っすぐを捉えた。ガツンという衝撃音とともに、打球は左中間席へ一直線。前の打席。3回2死二、三塁で3ボールから同じ真っすぐを打ち損じた反省を生かし、最高の結果につなげた。

 球団史に名を残す1発となった。高卒4年目でのシーズン20号到達は、衣笠祥雄、前田智徳に次ぎ3人目。ともに「鉄人」「天才」と呼ばれ、一時代を築いた大打者だ。「カープの歴史の中に入れたことは良かった。本塁打は意識していない。先輩たちがつないで、楽な場面で回してくれるおかげです」。謙虚な言葉を並べ、素直に喜んだ。

 打撃へのこだわりは強い。好機で凡退しベンチに戻れば、怒りをあらわにする。自分へのいら立ちが言葉になって漏れ、周囲が近づきがたいオーラを放つ。試合前の打撃練習でも納得がいかなければ、打撃手袋をたたきつけることもある。9回2死三塁で右飛に倒れた後も殺気立った顔を見せた。巡ってきた延長10回。2死走者なしから6点をもぎ取った後の21号ソロで、悔しさを晴らした。

 求道者のような姿は「侍」とも呼ばれた前田と重なる。一方で22歳らしい一面も見せる。ネクストサークルではマスコットバットや滑り止めのスプレーなどをきれいに並べてから素振りを始める。「いいことをしていたら、野球の神様が打たせてくれるかもしれない」。純粋に、野球と向き合っている。

 鈴木の本塁打が延長10回の猛攻を締めくくった。4連勝でマジックを減らした緒方監督は「異常なまでの集中力を見せてくれている」とナインを絶賛した。驚異的な成長曲線を描く22歳に慢心はない。「僕には無駄にできる打席は1つもない」。衣笠、前田にも負けない心の強さが、好調打線の大きな原動力となっている。【前原淳】