次は日本一じゃ! 広島が15日、10日に25年ぶりのセ・リーグ優勝を決めてから初めて本拠地に凱旋(がいせん)した。祝福ムードで真っ赤に染まったマツダスタジアムで巨人に完勝し、チャンピオンフラッグを手にファンにあいさつした。試合前、緒方孝市監督(47)が松田元(はじめ)オーナー(65)に優勝報告。「日本一をつかみ取ってくれ」と指令され、決意も新たにした。

 緒方監督は、東京から駆け付けた熊崎コミッショナーからチャンピオンフラッグを受け取った。そして1年前、シーズン最終戦で立てなかったマイクの前へ。「25年間長い間お待たせしました。ファンのみなさんおめでとうございます」。破顔一笑。3万2106人のありがとう、おめでとうを全身に浴びた。ナインを引き連れて場内を1周。夢中で戦い、25年ぶりにつかみとった栄光だった。気付けば秋風が吹いていた。優勝を決めてから初の広島凱旋(がいせん)。快勝がファンの心地よさを倍増させていた。

 盤石の試合運びだった。8月7日の巨人戦(マツダスタジアム)以来の先発となった新人の岡田が力のあるボールを投げ込んだ。打っては打撃好調の8番石原が4回に先制の犠飛。四球も絡んで1安打で先制する効率的な攻撃だった。7回には巨人の失策にも乗じて追加点。8回には走者をためてから、試合を決める一打を田中が放った。今季、繰り返してきた、しぶとくつなぐ攻撃を、地元のファンに見せた。

 休養のためジャクソンを抹消している救援陣も、ゼロでバトンをつないだ。一岡、今村、大瀬良が競い合う。野手陣も競争の縁にいる下水流や野間がしぶとく結果を残した。チーム内の激しい争い。相互にぶつかることで、皆が同じ方に向かう。CS前哨戦とばかりに意気込んできた巨人を、返り討ちにしてみせた。緒方監督は腕を組み、柔らかく見守る。求めてきた形だった。

 試合前には松田オーナーに優勝を報告。「優勝の報告をさせてもらった。大変喜んでいただいた。ただもう1つ。『日本一をつかみ取ってくれ』と言われ『はい』と言った」。入団から指揮官を知る松田オーナーは「すでに気持ちが切り替わっていて驚いたよ」と目を細めていた。

 もうチームの視線は次の目標に向いている。セレモニーの最後、緒方監督は決意を込めて言った。「厳しい戦いになると思います。覚悟を決めて、チーム一丸となって、ファンのみなさまと一緒になって、日本一を目指したいと思います」。快進撃は続く。遮るものは何もない。【池本泰尚】