CS男の面目躍如だ。日本ハム中田翔内野手(27)が、ダメ押し2ランでソフトバンク武田をKOした。4点を先制した5回、なおも1死一塁から左中間席に放り込み、一挙6得点のビッグイニングを締めくくった。自身CS通算6本塁打目。14年のCSではポストシーズン史上初の4試合連続本塁打を記録した主砲が、今年も爆発の気配だ。

 描いた放物線を、打席から悠々と見つめた。中田が本能むき出しで、甘い球を仕留めた。4点を先行し、イケイケ状態の5回1死一塁。ソフトバンク武田の初球。外角を狙った144キロ直球が、逆球となって内寄りに来た。「真っすぐを待っていたし、1球で決められて良かった。ボールも、しっかり見えていたしね」。一振りでケリをつけた。

 短期決戦、さすがの集中力だ。CSでは通算6本塁打目。史上5位タイとなり、5本を勝利に結びつけている。「あんまり覚えてないんよね」。2年前のCSでは、ポストシーズン記録となる4試合連続本塁打をマークしたが、当時の記憶はほとんどないという。「前回は前回。今年は今年」。邪念を捨て、目の前の1試合、1打席に全力を注ぐ覚悟だ。

 周囲の心配も吹き飛ばした。試合前は、ゴホッゴホッ…。人目を避けながら、大きな音を立てて、せき払いしていた。打撃練習を終え、知人と談笑中もこらえきれない。大丈夫かと問われると「大丈夫。空気が汚いというか…」。心配されまいと、ごまかした。実はシーズン終了後から、せきに悩まされている。7日に札幌ドームで行われた紅白戦は途中交代して早退するほどだったが、試合が始まれば関係なかった。

 かつて、体調不良からの一夜明けに言い放ったことがある。「オレは普通の人と、体のつくりが違うんや」。せきが止まらなくても、バットを持てば4番の仕事をするだけ。栗山監督も「うれしかったし、久々にジーンとなるホームランだった」と絶賛した。球場から帰路に就く際、半袖のTシャツ姿で言った。「流れ的に翔平で取れたのは大きい。すごく今日の1試合は大きい」。規格外の二刀流だけではない。規格外の4番打者もチームを日本シリーズの舞台へ導いていく。【木下大輔】

 ▼中田がCS通算6本目の本塁打。プレーオフ、CSの通算本塁打では(1)ウッズ(中日)和田(中日)8本(3)森野(中日)中村(西武)7本に次ぎ里崎(ロッテ)井口(ロッテ)坂本(巨人)に並ぶ5位タイ。6本中5本はチームの勝利に結びついている。中田はソフトバンクと対戦した14年ファイナルSで同一ステージ最多の4本塁打。同年1Sからは日本シリーズを含めポストシーズン史上初の4戦連発を記録している。