参戦準備が整った。今オフのFA補強に積極的な阪神が、対象の1人として調査を重ねるオリックス糸井嘉男外野手(35)がFA宣言した場合、VIP待遇で獲得に乗り出す準備を整えていることが24日、分かった。残留交渉でオリックスが示したのと同等の4年契約を検討し、交渉にはFA移籍の経験者でもある金本知憲監督(48)の出馬を視野に入れる。

 阪神がオリックス糸井がFA権を行使した場合、獲得に乗り出す方針を固めたことが分かった。球団首脳は「補強ポイントを補うのは当然」とし、来季の主軸を任せられる人材と期待。複数回の残留交渉を重ねるオリックスに負けじと、VIP待遇を準備する。

 球団首脳は条件面について、「本気で取りにいくとなれば、相手さんに負けないものを準備しないといけないでしょう」と語る。オリックスはすでに糸井に4年で最大18億円の大型契約を提示。当然阪神も、次回FA権を取得する4年後までの保証が目安になる。

 糸井は来年7月で36歳を迎えるが、成績は右肩上がり。今季は全143試合に出場して打率3割6厘、17本塁打、70打点をマーク。53盗塁で、史上最年長盗塁王も獲得した。その姿は、金本監督が36歳シーズンで初の打点王を獲得するなど年齢とともに円熟味を増した姿とダブる。妥協なきトレーニングで鍛え抜く糸井にも魅力を感じ、39歳シーズンまで保証する長期契約で誠意を尽くす方針だ。

 交渉役は金本監督にお願いする。球団幹部は「監督もFAで阪神に来た。不安なFA選手の気持ちは一番分かっている」と話した。02年オフに広島からFA宣言した時、出馬した当時の阪神星野監督に「チームを変えるにはおまえの力が必要だ」と口説かれた。今度は金本監督がその役を務める。大きな決断を下した経験者だけに、糸井の複雑な心中を思いやりながら阪神に来て欲しい思いを伝えることができる。年齢を感じさせない実力や独特の発言で超人といわれる男のハートを、鉄人が揺さぶりにいく。

 ドラフトでは大学日本代表の4番、白鴎大・大山悠輔内野手(21=つくば秀英)を1位指名。金本監督が早くもレギュラー級と見込む期待の右の大砲候補だ。さらに左の糸井も獲得できれば、貧打に泣いた得点力不足解消に明るい光が射し込める。FA宣言期間は、日本シリーズ終了直後に迫る。まずは糸井が宣言するかどうかの決断が注目されるが、虎はその時に備えて誠心誠意の条件を用意する。

 ◆阪神監督のFA交渉出馬 FA制度導入元年の93年に中村監督が石嶺(オリックス)との交渉に参加。獲得に成功する。99年には野村監督が星野伸(オリックス)、江藤(広島)と交渉。星野監督は01年片岡(日本ハム)、02年には金本(広島)、中村(近鉄)と直接交渉。真弓監督は10年藤井(楽天)の獲得に動き、09年にはマリナーズから日本復帰を目指した城島とも交渉した。