社会人野球日本選手権(京セラドーム大阪)が29日に開幕する。2大会ぶり17度目出場のJR東日本東北(宮城)は、11月2日の初戦で新日鉄住金鹿島(茨城)と激突する。エース左腕・西村祐太(27=桐蔭横浜大)と今夏にスローカーブをマスターした内山拓哉(27=東洋大)の入社5年目同期コンビで、東北勢悲願の初優勝を狙う。

 左右の2枚看板は、勝利に飢えていた。都市対抗を逃した悔しさが、日本選手権出場への原動力になった。西村は「どっちも出ないわけにはいかなかった。チームとして何も残らない1年になるところだった」と力を込めれば、内山も「都市対抗に出られなかった以上は、大阪で暴れるしかなかった」と覚悟を決めていた。2人の継投で8月末の予選を勝ち抜いた藤井省二監督(54)は「2人の出来にかかっている。まずは1勝」と期待を込めた。

 西村はきらやか銀行(山形)の補強選手で出場した今夏の都市対抗で抜群の安定感を見せた。2戦で15回を投げ4安打12奪三振。自責は0で「全国で抑えられて自信がついた」と振り返る。球速こそ130キロ前半だが、直球と同じ軌道から沈む120キロ台のチェンジアップを織り交ぜ、バットの芯を外すクレバーな投球に円熟味が出てきた。

 内山は今季から肘を下げ、腕の振りをやや横手にすることで技巧派に転身した。最速151キロの直球をセーブして制球力を高め、今夏からマスターした80キロ台のスローカーブで緩急を使い「力まない投球を覚えた」。8月末の予選3試合では14回1/3を投げ3失点と右のエースに成長した。

 今季の集大成だ。西村が「優勝しか狙ってない」と宣言すれば、内山も「2人で投げきると思っている。どっちが先発でも問題ない」と自信を見せる。JR東日本東北が確立した勝利の方程式が、大阪の地で答えを導き出す。【高橋洋平】

 ◆西村祐太(にしむら・ゆうた)1989年(平元)6月24日、さいたま市生まれ。小2で野球を始め、内谷中-浦和北高-桐蔭横浜大。182センチ、79キロ。左投げ左打ち。

 ◆内山拓哉(うちやま・たくや)1989年(平元)4月6日、東京都豊島区生まれ。小4で野球を始め、大成中-浦和学院高-東洋大。177センチ、76キロ。右投げ右打ち。

 ◆日本選手権と東北勢 過去41度行われているが、東北勢の決勝進出は1度もない。JT(宮城、廃部)が91年に4強、JR東日本東北も07年に4強進出を果たしている。東日本大震災の影響で中止になった11年以降で東北勢は、12年に七十七銀行(宮城)が8強、翌年も16強進出。記念大会だった14年はJR東日本東北、七十七銀行、日本製紙石巻(宮城)の3チームが、15年もTDK(秋田)が、いずれも初戦敗退に終わっている。