昨季途中に抑えから先発へ転向した日本ハム増井浩俊投手(32)が、今季は再び救援としてスタートすることが決まった。9日、2軍施設の千葉・鎌ケ谷で、栗山英樹監督(55)と対面し、再転向を直訴。先発ローテ入り後は7勝1敗とリーグ優勝に貢献し、指揮官は今季も先発の柱として期待する構想を描いていたが、本人の意思を尊重する形となった。

 新年のあいさつもそこそこに、増井は素直な気持ちを、栗山監督へぶつけた。「抑えをやらせてください」。当初は、先発ローテの一角として青写真を描いていた指揮官も、熱意に折れた。「気持ちは伝わった。基本的には、抑えの形、短いイニングから」。マーティンとともに、勝ち試合の終盤を任せることに方針転換した。

 昨季終了後から、ストッパーへの再転向を訴えてきた。先発となった昨年8月以降、7勝1敗、防御率1・18とリーグ制覇に大きく貢献。日本シリーズでも第2戦と第6戦に先発し、ローテの軸として活躍した。だが契約更改時の会見では「ゲームを締める最後にいられないことが悔しかった。来年は抑えをやりたい」と公言。通算83セーブを誇る守護神へのこだわりを示していた。

 昨季10勝(救援勝利含む)を挙げた投手の“ローテ離脱”は、編成上も影響は大きいが、同監督も「今年と同じことをやっていちゃ勝てない」と、新たな形を模索していく考え。先発登板時は「いつも6回まで」という心構えでマウンドに上がっていた増井は「自分が後ろにまわって、いいリリーフができれば(先発の負担も減る)」。先発ローテにあける“穴”を自身で埋めるつもりでいる。

 増井の代役守護神として、昨季終盤は9回を投げたマーティン(2勝21セーブ、防御率1・07)も来日2年目を迎える。同監督も「マーティンもいる」と話し、増井とともに「ダブルストッパー」として、起用法には幅を持たせる考え。大谷、有原、高梨ら成長期の若手先発投手たちが安定感を増せば、終盤に増井、マーティンが控える方程式へとつながるリレーは強固。侍ジャパン入りしている増井は「今月中旬にはブルペンに入りたい。(例年より)1カ月早いので」。数少ない抑え経験者でもあるWBC、そしてその先のシーズンへ向け、増井はフル回転する覚悟を固めている。【本間翼】

 ◆16年の日本ハム抑え役 開幕から昨季39セーブの増井を据えたが、不安定な内容が続き6月20日の出場選手登録抹消後、マーティンが引き継いだ。9月4日オリックス戦まで21試合連続無失点と活躍も、同戦で左足首を捻挫し、同6日に出場選手登録を抹消された。以降、先発で不振だった吉川がプロ初を含む3セーブを挙げたが失敗も目立ち、シーズン終盤は谷元、宮西が勝ち試合を締めた。今季セーブ記録者は、マーティン21、増井10、谷元、吉川、鍵谷が各3、宮西2の計6人。

<増井の16年>

 ◆開幕 抑えとして開幕3戦目の初登板でセーブ。

 ◆再調整 不振のため5月4日から2軍へ。同14日に再び出場選手登録され、抑えとして即日の西武戦で1回無失点。

 ◆再び降格 6月19日中日戦まで登板2試合連続2失点と不調が続き抑えをマーティンに譲る。

 ◆通達 2軍調整中だった7月8日、1軍に呼ばれ栗山監督と会談。先発転向を言い渡される。

 ◆6年ぶり 8月4日ロッテ戦で1年目の10年以来の先発。勝ち星は付かなかったが5回無失点の好投。

 ◆先発勝利 8月18日オリックス戦で8回途中4安打1失点、先発として6年ぶり白星。

 ◆2桁勝利 今季最終戦の9月30日ロッテ戦で、引退登板の武田勝の2番手で今季10勝目をマーク。

 ◆大舞台 日本シリーズでも2度先発し、11月には侍ジャパンの強化試合メンバーにも選出。

 ◆再転向直訴 12月の契約更改、イベントで「抑え再転向」を再三、公言。