プロ野球界の横綱へ、電車道や~。阪神ドラフト1位の大山悠輔内野手(22=白鴎大)が22日、大関稀勢の里(30=田子ノ浦)の大相撲初場所優勝に刺激を受けた。苦節15年、涙の初優勝を果たした苦労人は同じ茨城出身。勝負の世界に飛び込んだばかりの大山は、耐えてしのんで道を切り開いた故郷のスターに大感激。地道な努力を忘れず、一流選手に上り詰めることを誓った。

 テレビに映る勇姿に自然とコブシを握りしめたに違いない。時の人、稀勢の里の話題になると大山は、うれしそうに笑顔になった。

 「あまり相撲を見ることはないですが(稀勢の里の取組は)ニュースなどで見ました」

 下妻市出身の大山と、牛久市出身の稀勢の里。面識はないが、壁にはね返されながらも努力を続ける同郷力士の近況は、プロ入り前からチェックしてきた。精神的弱さを指摘されながらも、ひた向きに稽古に取り組む姿は「真面目だが、口べた」という茨城の県民性にも重なり、大山の心を揺さぶった。その姿に勝負の世界で生きるプロの極意を感じ取った。

 「努力する、当たり前のことだけど、当たり前のことをどれだけ一生懸命出来るかが、成功の秘訣(ひけつ)だと思う」

 プロの世界に身を置いて間もない。だが、頂点を極める人には共通項があると知った。金本監督は現役時代に素振りを欠かさなかった。投手やコースなど具体的なイメージを脳裏に描きながら振る。丁寧に時間をかけて。「当たり前のこと」を地道に積み重ね「大打者金本」は生まれた。小さな差は、大きな差となる。

 雨の鳴尾浜球場。大山はグラウンドでランニングなどのメニューを消化。稀勢の里に刺激を受けた男は、屋内練習場では黙々とバットを振った。今日23日には合同コーチ会議が行われ、キャンプのメンバー振り分けも正式に決定する。ついにシーズンに向けた競争のゴングが鳴る。

 「僕は同じ茨城出身として、野球でアピールしていきたいです」

 ルーキーイヤーから大活躍して故郷のスターと初対面を果たす。16年の「魅力度ランキング」で茨城県が47都道府県で最下位だったことにも心を痛め、故郷のイメージアップを誓っている大山にとって、それこそが最高のシナリオだろう。この日、稀勢の里は横綱白鵬を破り、新横綱誕生への流れを確実にした。大山にとって、本職の三塁では新外国人キャンベルらとの争いが待ち受ける。地道にサボらずコツコツと-。稀勢の里のような茨城魂でプロの荒波に挑む。【桝井聡】