だから言ったでしょう、打球は危ないって! 右膝関節炎から復活を目指す阪神糸井嘉男外野手(35)が21日の練習でアクシデントに見舞われた。メイン球場で外野をランニング中に、福留のフリー打撃の打球が右腕を直撃。一時は騒然となったが、まさかのあっけらかんコメントで周囲をあぜんとさせた。いやこれは糸井が「超人」なだけで、ヨイ子は決してヨシオをまねしないように。

 今キャンプで初めて半日練習になった宜野座球場が、騒然となった。午前9時46分。右翼ポール付近をランニングしていた糸井を、痛烈な打球が襲った。フリー打撃中だった福留のライナー性の打球が右肘の上を直撃した。勢いを失ったボールは芝生の上にボトッ。トレーナー陣は血相を変えて駆け寄った。

 糸井はランニングを切り上げてサブグラウンドへ移動。ダッシュメニューは行ったが、キャッチボールと打撃練習は回避した。宜野座ドーム内ではチームドクターの診療を受けたとみられる。キャンプインから別メニューの超人は、17日に屋外フリー打撃を開始し、いきなり140メートル弾を放つなど3日連続で豪快な打球を連発。前日20日のオフをはさみ、さあここからというタイミングでのアクシデントだった。

 緊迫した空気が流れるかと思われたが…人を超える存在と呼ばれる男は違った。ウエートルームで最後のメニューを終えてファンを見つけると約10分間、痛めたはずの右手でペンを走らせた。記者から右手は? と問われると真顔で「左手や!」。ジョークをお見舞いすると、戸惑う記者を指さしてたたみかけた。

 「収穫や! 硬球は硬くて痛い!」

 ん、危険が危ない? 一瞬の沈黙。そして大爆笑。緊急事態も笑いに変えて吹き飛ばす、糸井ワールドを展開した。

 球団関係者によると右腕は軽い打撲。急激に動くと腫れるため、打撃練習など一部のメニューを取りやめた。練習後にアイシングなどを施したが、病院には行かず。今日22日にも打撃練習を再開するという。

 くしくも、17日から3日間のフリー打撃で特大の柵越えを連発し、宜野座球場が防球ネットを新設するなどの安全対策を検討し始めたところだ。プロの打球の危なさを、長距離弾を放つ張本人が身をもって示したような格好。その上、ケロリと回復し、独特の言い回しで軽傷をアピール。超人ぶりを際立たせるだけの「糸井劇場」だった。

 この日は金本監督の計らいで練習が午前中だけといういわゆる「半ドン」だった。糸井は「今日は何もやってへんわ~」とつぶやいて、帰りのタクシーに乗り込んだ。何もしなくても、堂々キャンプの主役になった。【桝井聡】