女子エース土屋愉菜投手(2年)を擁する長泉中が、1-0で熱海中を下し、4強入りを決めた。土屋は女子エースでは大会初の完封勝利を飾った。準決勝は3月4日、島田球場で開催される。

 力を合わせて1点を守りきった。7回裏2死二、三塁で一打逆転のピンチ。土屋のいるマウンド上に内野陣が集まった。全員で「強気でいこう」と士気を高め、信頼する捕手の進士凌太郎主将(2年)へボールを投げ込んだ。そして、カウント1-2から気持ちを込めた一球は捕邪飛に。進士と歓喜のグラブタッチを交わした土屋は「熱海にリベンジできて4強にこられてうれしいです。進士が熱海を分析してくれおかげです」と女房役をたたえた。

 進士は前日25日、熱海中と対戦決まると、母が録画した熱海中との練習試合の映像を約2時間分析した。選手の特徴などをメモ帳2枚にびっしりと記し、試合中もベンチ内で確認した。「負けて悔いを残したくなかった」と進士。大会史上初となる女子エース完封の大きな力になった。

 土屋は進士のリードに従い、丁寧にコーナーをついた。直球は最速107キロだが、外角の変化球と内角の直球のコンビネーションで凡打の山を築いた。結果、相手を4回まで1安打、7回を2安打に抑えた。前日の2回戦でも4回を投げており、吉田洋一監督(53)は継投策を予定していた。だが、土屋は「投げます」と言い、1人で投げきった。「負けず嫌い」がゆえに主張だった。

 土屋の父で知徳野球部部長の昇彦氏(49)は言った。「娘が『今日、女の子だからって言われた』と言って悔しそうにしていたことが何度かある」。土屋は小1で野球を始めてから、女の子扱いされたくない思いを強く持っているという。

 女子エースを擁するチームの4強入りも大会史上初だが、土屋は「みんなのおかげで勝てている。ここまで来たら優勝したい」と言った。自分が特別な存在とは思わず、仲間と一緒に頂点を目指す。【大野祥一】