元気印の慎之助がMVPだ! 巨人は1日、沖縄キャンプを打ち上げて帰京した。高橋由伸監督(41)はキャンプMVPに「何のために選ぶのか、よく意味が分からない。自由に決めて」と苦笑いしたが、2000安打を目指す阿部慎之助内野手(37)の状態には太鼓判を押した。4年ぶりに故障なくキャンプを完走した主砲がチームをもり立てる。

 高橋監督に「キャンプMVP」という概念はない。恒例の打ち上げ質問に「何のために選ぶのか、よく意味が分からない」と苦笑い。採点についても「シーズンが終わってから、するもの」と線を引いた。本番への下地作りがキャンプ。鍛錬の出来に点数をつけることは、指揮官の中ではナンセンスだった。

 ただベテラン阿部の仕上がり具合については、昨年の同時期との比較を明言した。「慎之助は1カ月、若い選手とずっと一緒にやった。去年と比べたら、雲泥の差ということは、本人もこちらも感じている」。1年前はS班での別調整を委ねたが、右肩痛に苦しみ、捕手としての復帰も見通しが立たなかった。だが一塁手に専念する今季は心機一転の姿は元気ハツラツに映った。

 阿部はよく振り、よく書き、よく話した。キャンプ中4度もランチ特打に臨み、時間を縫っては室内でマシン打撃にも取り組んだ。練習後の臨時サイン会にも何度も登場。球団関係者も感謝するほどペンを走らせた。27日は練習前の朝の宿舎でバッテリーミーティングに「特別講師」として参加。「打者心理について。どういうカウントで打者は狙ってくるか」と伝えた。

 キャンプを故障なく、完走したのは4年ぶり。「久しぶりだな」と、つぶやいた。2000安打へ残り83本のシーズン。濃厚な準備を重ねた。「一番大事なのはケガもなく、すごく充実していたこと。2000本もあるけど、あまり意識していない。チームが勝つ1本を意識したい」。ヒットと勝利をリンクさせることしか頭にない。

 高橋監督は那覇空港で「MVPは自由に決めて。誰だと思う?」と報道陣に逆取材した。どの答えにも肯定も否定もしなかった。シーズンの結果でしか正解は出せない。最もバリバリ活躍した選手に価値がある。阿部がキャンプMVPを秋に証明する。【広重竜太郎】

<阿部の近年キャンプ>

 ◆12年 2月24日のDeNA戦で140メートル今季1号と上々。

 ◆13年 WBC日本代表主将として仕上がりも早く、宮崎キャンプまでチーム練習に参加。

 ◆14年 2月8日に松井臨時コーチが打撃投手を務めて対決。「日本一の打者を投手として体感した」。22日に左ふくらはぎ打撲で別メニュー調整となり、最終日の27日に復帰。

 ◆15年 一塁転向元年も2月16日に右ふくらはぎ痛で離脱し、キャンプ中は実戦復帰しなかった。

 ◆16年 S班で調整ペースを委ねられたが、右肩痛で状態が上がらず、開幕2軍となった。