みちのく社会人野球は、「大谷世代」が沸かせる。日本製紙石巻（宮城）内定の小原大樹投手（２２＝慶大）は花巻東で日本ハム大谷とチームメートで、２度の甲子園に出場した。

　「大谷と一緒に投げた男」は燃えていた。小原は固い決意を持って石巻にやってきた。「高校の時に岩手から日本一をとれなかった。東北の地でもう１度、日本一を目指したかった」。花巻東に在籍時は大谷と左右の２枚看板として、全国制覇を狙ったが届かなかった。だが、大谷と共有した３年間は小原にとって貴重な時になっていた。

　小原　ある意味、日本一の刺激をもらっていた。翔平と身近でやれていたのは、誰しも経験ができることではない。１６０キロを投げるって言って、口だけじゃなくて実際に投げている。あいつの生き方が不可能を可能にしてきた。やりたいことに対して、的をとらえて必要なことを考えてやっていた。良い意味で、生きる上で希望とモチベーションになっている。

　卒業後、大谷はプロの道を選び、小原は慶大に進学した。当初掲げた「大学日本一」こそかなわなかったが、大谷の活躍に刺激を受けた大学４年間で、直球の最速は１４６キロまで上昇した。「まずはフィジカルを鍛え直す。１５０キロを出したい。勝つためには必要な数字」と意気込むが「球速がすべてじゃない。チームを勝たせる投球が一番」と、切り替えられるクレバーな頭脳も持ち合わせる。

　今でも連絡を取り合い、年に１度は大谷と会食する。「僕に連絡が来るときはよっぽど暇な時。会った時は普通に“翔平”って話しますよ」。戦友は昨年、一足先に日本一を達成。怪物を知る男も負けてられない。「日本一しか考えてません」。繰り返し宣言する小原の目は、本気だった。【取材・構成＝高橋洋平】